「私も飲み会行きたかったな〜」
「それ言いに来たの?」
開口一番に不平を漏らす。
飲み会の留守番をくらったことが不満だったらしい。誘ってないんだけど。
21歳男子で飲みに行くよって言ったら、勝手に行きたいって言いだしたんじゃん。
「違いますぅ!はい、これ鬼怒田さんから」
差し出された書類を受け取りながら、今日は正当な理由でここに来たんだなと思う。
「ねえねえ、なんの話したの?」
書類を渡したらすぐ帰るのかと思いきや、ちゃっかりと近くに座って会話を始める。
「なんだろうね」
「みんな彼女とかできてた?」
「少なくとも諏訪は無理じゃない」
「なんで?」
冬華は不思議そうに首を傾げてるけど、もちろん俺が教えるはずがない。
改めて報われないな、と少し不憫になった。
まあ、諏訪が不憫でなければ俺が不憫になるわけなんだけど。
「さぁ、なんでだろうね」
「え〜諏訪くんに聞きに行こうかな」
無邪気にとどめを刺しに行こうとするあたり、たちが悪い。
「諏訪くん彼女できないの?」って聞かれた諏訪の顔が想像できてしまった。
さっさと話題変えちゃおう。
「そんなことより早く仕事進めなよ」
「きびしい……」
「大学生たちのレポートがひと段落したらまた飲み行こうって」
そういえば伝えていなかったな、と思い出して言う。
「冬華が行けなくて落ち込んでるって言ったら」
「やったー!みんな最高!」
あからさまに幸せそうな表情になって両手を突き上げる。
これでしばらくは仕事を頑張るだろうな。
あとは、次の飲みで諏訪がとどめを刺されないように祈ろう。