「ほら早く!」
「なー、それ別に今じゃなくてもよくね?」
「だって迷惑かけんたんだから」
飲み物を買いに少し作戦室を離れていたら、入口の前につい先日もここに来た二人組がワイワイやっていた。正直、関わりたくはないがそこを通らないと作戦室には帰れない。
「俺らの作戦室になんの用事だバカップル」
「ひい、荒船。いや、先日はお世話になったので」
「確かにテストの点数報告しに来たと思ったら、二人揃ってずいぶんと大変だったようだな」
「え、ちょっと待って、かがみんどこまで話したの」
どうせこのまま作戦室には入れないだろうと思って、買ったスポドリに口をつける。
「お前が泣いてたって」
「うわー、なかったことにして」
「は?澪泣いてたの?」
「当真、後で話すから」
二人のなかで何がどう決着ついたのか知らねえけど、二人でケンカして泣いたんじゃないのか。
澪の発言に当真が驚いているあたり違うらしい。まあ俺は首突っ込む気ないけどな。
「うちの当真を気にかけてくれてありがとうございました」
澪がペコッと頭を下げるが、どちらかというとその隣で我関せずと言った顔をしているリーゼントが頭を下げるべきだと思う。
俺はお前が練習に来ないから、サボりかと思って加賀美経由で澪に連絡回そうとしただけだからな。
「俺の説教のせいかと思ったからな」
「ははは、俺がそんなことで落ち込まねーって」
「もう一回、説教されてえのか」
「あ、ばか!ごめん、ごめん荒船!」
ケロリとしている当真と反射的に謝る澪。
思ったよりも俺は澪に怖がられるみたいだ。
調子に乗ったというかは、ただの通常運行の当真はいつものように余計な一言を続ける。
「おい荒船、俺の澪泣かしたら、ぐっ」
しかし、俺と澪息はあってるようだった。二人とも同じタイミングで当真にこぶしをめり込ませた。
被害者 荒船哲次