「冬島さん、何してるんですか」
「暇なんすか」
矢継ぎ早に東、諏訪の攻撃を受ける冬島さん。
「は?なんでみんな俺に冷たいの?聞いてくれよ高校生にバカにされた」
そんなんいつものことっすよ、と返す諏訪。対してははは、と笑って誤魔化す東春秋。
格の差が出たな、とか思いつつ視線を冬島さんのほうに向けるとばっちり目が合った。
「○○ちゃん久しぶり」
へらっと笑いながら手を振られる。
「お、お久しぶりです……」
「エンジニアの仕事どうだ、楽しいか」
「ええ、まあ……」
まあそこそこの不満はあるけど仕事なんてそんなものだろう。
仕事が楽しいか、に対しての回答としては嘘ではないはずだ。
職場についてなら、少し回答は変わるかもしれないが。
チラッと東の方を見ると、意味深な視線を向けられていた。
なんだよ、何か言いたいのかよ、そう思っていると口を開いた。
「冬島さんがいないからつまらないそうですよ」
「ちょっ、東春秋」
「へえ、かわいいこと言ってくれるじゃん」
やっとエンジニアとしての俺の偉大さがわかったか。と笑いながら言う冬島さんに、すいません、とか言えない私と東。
「○○さんも東さんも何してたんすか」
諏訪がちょっと引き気味に聞いてくる。
「いや、ちょっと連日で開発室に通って提案を、ね?」
東春秋に同意を求める。視線で同意を求めるが、こういうときはこっちを見ようともしない。
ちくしょう、お前も共犯みたいなもんだからな。
「ああ言うのは無茶ぶりって言うんだよ」
その冬島さんの言い分はエンジニアになったことでとてもわかる。
「だってどうせなら東春秋の能力フル活用したいじゃないですか」
「なんすかその理由」
諏訪は外野で爆笑してる。あんたらの武器が充実してるは私たちの尽力のお陰なんだからな。
「東のこと大好きかよ」
冬島さんが笑いながら冗談交じりに言ったその言葉。
もちろんこれっぽっちも本気でないことなんてわかっている。それでもなんだかつらくて。
ここで、私が好きなのは今も昔も冬島さんです、なんて言えたら楽なのに。
東春秋に助けを求めたいけど諏訪もいるし、それにいい加減、巻き込み過ぎなんて自分でわかっている。
どうにかしたいけど、どうもできない。この状態に長く居すぎてしまった。
「そんなことないですよぉ……あ、そろそろ戻らないと」
ちょっと大げさに腕時計を見ながら言う。
「そうか、仕事頑張ってな」
「○○さんお疲れっす」
東春秋は何か言いたげだったけど、「そうか」と言って手を振っただけだった。
私ってば、ほんとに弱くてだめだなぁ。
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