「うちの狙撃手はいったいなんなんだか」
「はいはい」
「東くん、俺に冷たくない?」
ついさっき作戦室に当真の彼女が乗り込んで、彼女宣言していった。
落ち込んでいた当真をどうにかしたかった俺としては別にいいんだけど、その場には居
づらかったのでとりあえず作戦室を出た。
「ちょっといろいろあったので」
「目の前で青春見せつけられたとか?」
「それは冬島さんでしょう」
「塩対応されるんだったらやっぱ開発室行くべきだった」
「俺のこと見つけてついてきたの冬島さんじゃないですか」
なにかを見せつけられて、ちょっと荒んだ心で廊下を歩いてたら、ちょうど暇そうな東を見つけたので捕まえた。
どうやら人見のホラー映画鑑賞に作戦室を乗っ取られたらしい。
帰る場所のない仲間じゃん、と言ったら結構ガチめに嫌がられた。
「最近あんまり開発室に顔出してねえからさ」
「らしいですね、△△に聞いてます」
「あー、○○ちゃんね。全然、会ってねえな」
東の口から出たその名前に、懐かしい顔が思い浮かぶ。
「寂しがってましたよ」
「冗談でもうれしいねぇ」
昔からよく開発室に顔を出す子だった。
「こういうの作って、東春秋に持たせたい」
そう言って、エンジニアの頭を悩ませる存在で、俺にもよく難題をふっかけてきた。
元々、モノを考えるのが好きだったらしくデザインまで考えてきたりした。
そういえば寺島がレイガストの開発に乗り出した時も相談のってたっけ。
大学の4年になって、○○はもうアタッカーは引退していて開発室にだけ出入りするようになっていた。
ある日、そういえば就活とかしてなかったけど、東みたいに進学なのかなとふと聞いた。
「○○ちゃんは大学院いくの?」
「私ですか?行きませんよ?」
院の試験受けてないし、と笑う○○ちゃんに驚きながら質問を重ねる。
「まじか。卒業後はどんすんの」
「エンジニアなります」
あっけにとられて声も出ない俺を見ながら、にやっと笑って続ける
「朝から晩まで私と一緒ですよ。喜んでいいですよ?」
そういや、なんやかんやで俺に懐いてたよな。
うぬぼれではなかったと思う。
「冬島さんにあこがれてエンジニアになるんですよ」
当時は「はいはい。かわいいこと言ってくれるねー」と流したあの言葉がなにか胸に引っかかった。
春によく似た人でした