「久しぶりだったのに」

どこか逃げるように去っていった○○の背中を視線で追いながら東に話しかける。

「避けられてるんじゃないですか」
「えー、なんで……」

東の投げやりな回答にちょっとショックを受ける。諏訪は空気を読んでいるのか、それとも面白がって聞いているだけなのか静かにしている。

「冬島さんが変なこと言うから」
「え、俺なんか変なこと言った?なあ、諏訪」
「は……えっ、俺っすかぁ?」

急に話題を振られてわたわたする諏訪。俺も俺で身に覚えがないので真剣に考える。
その様子を見ていた東はため息をついてから、先ほど俺の言った言葉を復唱する。

「『東のこと大好きかよ』。……前にも言ったじゃないですか、寂しがっているって。なんで△△がエンジニアになったのか知っているでしょう」

「俺にあこがれて、って……」

あの笑顔が脳裏を過ぎる。
もしかしたら記憶の中で光景などに多少の脚色は入っているかもしれない。それでも○○ちゃんが俺にあこがれてエンジニアになったのは事実だった。

「△△が好きなのは俺じゃないことぐらいわかるでしょう」

これ以上は言いませんよ。そう言った東の表情とここまでの会話で合点がいく。

「悪い、俺行くわ」
「そうしてください」

諏訪はまだ急な情報量についていけずに俺と東の間で視線を行き来していたが、東からのGOサインは出たのでそのまま開発室に向かう。

開発室に行って、○○ちゃんに会ってどうすればいいんだろう。
今の俺にはまだわからないけれど、会って話さなければと思った。



ロマンスよどうか色褪せないで
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