「で、急に呼び出してなんなの」


カウンターでカプチーノを受け取ってきた響子が怪訝そうな顔をしながら私の前に座る。

私のカフェラテはすでに私の指先によって熱を奪われていた。

猫舌には好都合のそのカフェラテを口に運びながら話を切り出す。


「あのね、告白しちゃったの」

「……は?え、本気で言ってる?」

「さすがにこんな冗談言えるほどの余裕ない・・・・・・」


いまだに本当に現実だったかわからない記憶を反芻する。

勢いあまって告白した。なんとか涙をこらえたつもりだったのに、口に出してしまったことでなにかが崩れて涙が止まらなくなった。

冬島さんも焦ってるし、なにより泣かせたんじゃないかってお店の人が心配して寄ってきてくれて、色々と大変だった。


「で、どうだったの」


ずい、と身を乗り出して聞いてくる響子。その勢いに少し気圧されながらもその後の展開を思い出す。


「・・・・・・なんと、付き合うことになりました!」


「ちょっとー!」響子がテンションのままに出したその声に周りの数人が振り返る。

シーッとやると声は出さないままに私の肩をバシバシと叩く。口に出して言ったら怒られるだろうけど、力が強いからめちゃめちゃ痛い。




「本当に俺でいいの?」


やっと泣き止んで呼吸のリズムも落ち着いたところで冬島さんが切り出した。


「冬島さんじゃないと嫌です」


開き直った私の心はお酒の支援も得てとても強い。真っ直ぐと見つめ返して言う。

その視線に応えて冬島さんもこちらを見つめる。しばらくの沈黙が訪れる。


「・・・・・・ほんと、いつでも俺のこと困らせてくれるよね」


沈黙を破ったのは冬島さんで、苦笑しながらそう言われた。


「冬島さん、顔赤いですよ」

「○○ちゃんは顔も目も真っ赤だよ」


不細工に泣いたあとで化粧も崩れ去っていただろうけど、それでもいままでで一番いい笑顔だったと思う。


「いやー、これで片思いは私だけってことね」


その声で記憶から現実に戻ってくる。席の背もたれに寄りかかって、いかにも落胆といった表情になる響子。


「ご」

「待って、謝らないで」


私の声を遮るように強い声で言われる。同時にバッと出された手に怯む。


「まるで私に見込みがないように聞こえるから。 いいわ、すぐに追いついてみせるわよ 」


そのかわりに私の話もっと聞いてもらうから、そう言って笑う響子にまたじわっときて涙腺が危うかった。

あとは東にも伝えるし、またそのときに私は泣きそうだなぁ。


涙腺も緩くなって、もう歳なのかな、とか言ったら冬島さんになんて言われるだろう。

そう考えた後に、相も変わらず私の中心には冬島さんがいることに気づいてちょっと可笑しくなる。


大学生の頃からさんざん周囲を巻き込んだこの恋がやっと一歩先に進めた。

でもきっとこの先も周囲を巻き込み続けながら進んでいくんだろうな、と思ったけどまあそれも私らしくていいかなとか完結した。



ジェラート・イン・ファジー
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