変態なヒロトとバレンタイン

「名前!!!」
「!?」

自室のベッドに寝っ転がって雑誌を読んでいると、いきなりヒロトが大きくわたしの名前を呼び、部屋に入ってきた。

「…ノックくらいしてよヒロト」

そう言ってる間にも彼はずんずんとわたしに近付き、ベッドに膝を預け詰め寄る。ちょっと、近い。そう言いながら壁側に逃げた。

「バレンタインなのに名前なんでチョコくれないの!」
「…わたし料理できない」
「知ってる!そうだと思って、じゃじゃん!!」

ならなんで聞いた、詰め寄った、と言う間にヒロトはポッキーの一袋を差し出した。

「ポッキー?」
「姉さんが買ってきてくれたんだ、バレンタインだからって」
「ふーん…」
「というわけで!ポッキーゲームしよう!!」
「なぜそうなる!」

ポッキー片手に壁ドンをかましながら距離を詰める奴から顔を背けながる。「11月11日でもないのに!」と叫ぶと「名前がチョコくれないから!」と返された。くそ、こんなことになるなら下手でもチョコ作っとけばよかった。

「さあ!」
「ぐっ」

こ、こいつ。彼女の口にポッキー突っ込みやがった。ポッキーって長いんだぞ、喉に刺さったらどうしてくれる。

「んー」
「!」

もう片方のポッキーに口をつけ、さくさくと食べ進めてくるヒロト。彼の緑色の瞳がわたしをとらえながら、黙々とポッキーを食べ進める。私は一向に食べ進めないので、口に残るポッキーのチョコレートの部分が溶けてきた。

「ん、」
「っ」

距離がゼロになり、唇が重なる。リップ音を立てて唇を離す彼は、にこりと笑って私の唇に指で触れた。

「ここ、チョコレート付いてるよ?」


不意打ちはやめてもらえますか
(急に大人びた表情するのは、心臓に悪いのでやめてください)

130203



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