綺麗なもの



綺麗なもの。

美しいもの。

それはやっぱり・・・










それはある日のことでした。
ある日、と言っても彼らにとってはいつものことで、いつもであるがゆえに恐怖なのです。

アカデミーの廊下をスキップで歩いている女の子がいます。
名前はナマエ・ミョウジと言います。
容姿端麗で、黙っていればナマエはとても可愛く、彼らもそんな彼女は大好きです。

そう、黙っていれば。










「今日は誰と遊ぼうかなぁ♪」

ナマエはその大きな瞳でキョロキョロと辺りを見回しました。でも彼女の性格を知るものは誰も近くに寄って来ません。

「むぅ・・・」

寂しそうに、つまらなさそうに頬を膨らませると見かねたアスラン・ザラが走ってきました。

「ナマエ、どうしたんだ?」

ザフトのエースは好きな子の為ならどこからでも駆けつけますが、この子の事に関すると学習能力がありません。

そしてナマエは目を輝かせてアスランにぎゅっと抱きつきます。

「あのねっあのねっ、私今お金が足りてなくて・・・」

いつもの光景です。

そしていつもの様にアスランは騙されました。

「その代わりにと言っては何だけど、俺とデートを「あ、私用事思い出したからばいばーい!」

後には、その場にがっくりうなだれるアスランとポンポンと肩を叩くディアッカ・エルスマンの姿が見られました。










上機嫌なナマエはまた歩いていると、今度はラスティ・マッケンジーに会いました。

「あ、ラスティ!」

ナマエはアスランの時とは違う声でラスティの名前を呼びます。ラスティはうげ、と声を漏らすと一歩後退しました。

「もう何もないんだけど?」
「うん、知ってる!」

巻き上げている本人にそう言うと、明るい声で返事が返ってきます。

「だから今日は成果を見てもらおうと思って」
「聞いたぜ?アスランが死んでた」

にしても、とラスティは続けます。

「性格変化激しいよなぁ」
「えー?ナマエが?そんなことないよぉ♪」

それだよ、それ。
ラスティがボソッと言いました。

「ん?何か言った?」

その目には鬼が降臨していて、ラスティはナンデモゴザイマセンと目をそらせます。

「ま、いいや。ところで今ここで組み手しない?」

へ、とラスティが言いかけたところで、宙を舞いました。ゴンっという鈍い音とジャラ・・・という金属がぶつかる音。

「やっぱり持ってるじゃん」

頭の事は気にせず、金属がぶつかった音の方へと手を伸ばしポケットに手を突っ込むと、お金が出てきました。なんという執念深さでしょう。

「じゃあねー、ラスティッ!!」

ナマエはそう言うと駆けていきます。

後には、倒れたラスティとそれを運ぶディアッカの姿が見られました。










「ナマエッ」

逃げることもなく出て来たのは、イザーク・ジュールです。
彼はぶりっこでは落とせません。
かといって先程のように戦術を駆使しても、彼は用心深いのでそれも出来ません。

「あれぇ、イザーク?」
「その喋り方は俺には通用せんぞ」

そんなことより勝負しろ!!と怒鳴りつけてきました。

「勝負?組み手とかー?」

とりあえず組み手作戦で行くことにしたようです。
イザークは自慢げに笑うと、さっそくナマエにつかみかかってきました。

「きゃぁっ」

ナマエはあっという間に組み敷かれ、涙目でイザークを見つめました。
さすがにこの体勢にその視線はイザークにもぐっときます。

「いざぁくぅ」

甘ったるい声で呼んでみると、イザークは顔を真っ赤にして、そしてそのまま固まりました。

するとラッキーな事にニコルが向こうからやって来ます。

ナマエはすかさず声を上げ、ニコルに助けを求めました。

「ニコルーっイザークが発情したぁ!!」

といいつつイザークのポケットに手を突っ込んで財布を抜き取りました。
この辺抜かりはありません。

「何ですか!!イザーク!!大人げないですよ!!」
「い、いや!!違うぞ!!俺はまだ何も・・・っ」
「まだって何ですか!まだって!!」
「本当に何もしていないし、勝負内容を組み手と指定したのはあちらの方だ!!」
「それは本当ですか、ナマエ・・・って、居ませんよ?」

まさか!とニコルは自分のポケットに入っていた小銭入れをチェックしました。
やっぱりありません。

その後、ナマエを追いかけるニコルと、盗まれたと認識していないイザークとその財布捜しを手伝うディアッカの姿が見られました。










綺麗なもの。

美しいもの。

それはやっぱり



お金でしょ?










今日も元気な少女の高笑いと、

男たちの悲鳴が聞こえてきます。













あとがき
ネタ提供はM・Iさんです。
ありがとうございました。



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