Target−01
長電話




タコヘッド獄寺隼人はすっかり十代目(沢田綱吉)に懐き(?)、幼馴染みに近状報告をしようとしていた。幼馴染みは、まぁ彼女のことだから今トマゾファミリーの墓荒らしでもしているのだろう。 一日一回トマゾファミリーの墓荒らしを日課にしたいと言っている奴だ。

しかし、何度コールしても出ない。
と言うことはやはり墓荒らし中、という事だろう。

後からもう一度かけ直すか、と思いボタンに手をかけたとき、コールが止み電話から声が聞こえた。

「名前?俺だけど・・・」
《・・・っと、ここに爆弾をセットして・・・・・・》

なにやら物騒な単語が聞こえる。

「おーい、名前ーー?」
《よし、準備は完璧だ!!》

幼馴染み、名字名前の聞いたことがないような楽しそうな生き生きした声が聞こえ、隼人は我が耳を疑った。
というより、電話に出たのは良いが会話が出来ない、ということはどういうことだろう。

(・・・・・・・・あ、たまたまボタンが体に当たって、押したってかぁ?)

そうなるようなタイプの携帯はかなり古いはずだが、名前はまだ持っていたようだ。物持ちが良いと言えば聞こえは良いが、実際武器や弾薬に金をつぎ込み、兄の借金もあるので、金が無いというのが現状だ。

《じゃあカウントダウンいっきまーすっ!!ごーお、よーん、さーん、にーい、いーち》

そして爆音が(この音量は相当火薬使ったはずだ。 隼人談)電話越しにでも轟いた。

「うるせぇッ!!おい、いい加減に電話に出ろ、名前!!」

きゃーきゃーと中学生の女子かと思われる(実際中学生女子)喜んでいた名前の声が止まる。

《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》

あ、ヤバイ。

《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》

怒ってる。

《・・・・・・・・・隼人か?》

やっと出たと思えば、先程の声とは全く違う、超低音の(これが普通)名前の声が響いた。
彼女の特徴を話しておくと、日本人であるにも関わらずイタリアへ飛び、向こうで幼馴染みとして日々遊んでいた(正直ピアノもこいつに習った)悪友(?)でもある。

「やっと出たか。つかおせーよ」
《無駄口は良いから用件を言え。私は忙しい》

正確に言えば、『私は(墓荒らしに)忙しい』なのだろうが。
現に何かを砕くような音が電話口から聞こえている(墓石だ)。

「それがな、十代目は素晴らしい方だぞ」
《・・・・・・・・・一ヶ月前までその十代目とやらの悪口を叩いていたのはどこのどいつだ?》
「・・・いや、素晴らしい方なんだ!」
《無視か。まぁいい。それだけか?切るぞ》

なぜそこまでして墓荒らしに専念したいのかは分からないが、彼女の趣味(嫌な趣味だと思う)なのだ。仕方ない。

「ちょっとまて!あとひとつ話がある…」
《・・・・・・短い話か?》

更に声のトーンが一つ下がる。墓荒らしを邪魔されたのが相当むかついたらしい。

「あ、あぁ・・・」
《・・・いいだろう、日本円で壱万で聞いてやる》
「・・・5000円」
《なら聞かんぞ》
「・・・8000円」
《もう一声》
「8500円」
《9700円》
「8550円」
《9600円》
「っち、分かった。それで手を打とう」

小競り合いが続いた後、やっと隼人が折れた。受話器の向こうではさぞかし名前がほくそ笑んでいることだろう。

《で、なんだ?》

『で、』の部分の声なんか、かなり輝いている。まぁ現金な奴だから当然なのだろう。

「・・・えーとな・・・その・・・」

多分、下手にこの話をすれば奴(名前)はキレる。それを、いかにオブラートに包んで、穏和に持ちかけるか、それが問題なのだ。なのに奴と来たら・・・

《ごーお、よーん、さーん・・・》

カウントダウンを始めやがる。

《にーい、いーち》
「お前も日本に来て、十代目に会え!!」

そんな、オブラートに包むどころか単刀直入、まさかの命令形。
すぐに怒号が飛んでくるかと思えば、そうでもない。

沈黙。



まだ沈黙。



ずっと沈黙。



《はぁッ!?》

 








私は耳を疑うしかなかった。
あの隼人が?
私に命令を下しただと?!

《はぁッ!?って何だよ!》

あいつは怒ったように怒鳴り返してきた。緊張の糸か何かが切れたんだ。
煩いので電話を耳から遠ざける。しばらくすると静かになったので、そろそろ言い頃かと電話を耳に当てた。

「・・・お前、今すぐ精神科に行け。日本の医者がイヤならこっちの医者でもいい。とりあえず精神科だ。間違っても小児科に行くんじゃないぞ。じゃあな」
《ちょ、待てって!冗談とかじゃねーから!》

フフフ・・・いつも思うが、おちょくりがいのあるやつだ。
勿論冗談だとは思っていない。これでも悪友、かつ幼馴染みだ。奴もちゃんと分別しているだろう。

「まぁ、分かった。電話を切るのは止めてやろう。それよりも、私も来いとはどういう風の吹き回しだ?」
《お前も多分十代目のこと多少なりと馬鹿にしてんだろ》
「当然だ。若造は嫌いだからな」

若造。
同じ年齢だと聞くが、まぁ私からしてみれば皆若造だ。

《一度会ってみろよ。十代目は本物だ》
「ほぉ」

顔は一度写真で拝んだことがある。
私の右ポケットには色んな写真が入っていて、リボーンさんから送られてきた写真の中に当然その十代目、沢田綱吉の写真もある。正直ぱっとしないやつで、成績は下。運動神経も最悪。こんなやつのどこに魅力があって、九代目も一任したのだろう。隼人だってそうだ。そもそも十三歳であのボンゴレのボスをやらせようと考える時点で間違っている。

《・・・おーい、名前?生きてっか?》
「勝手に殺すな。私は健全だ」

で、と私はあいつに喋らす隙を与えず続ける。

「まぁ、考えてやらんでも無い」
《本当か!!十代目はすばらしい人d「いくら出す?」

するとあいつは沈黙した。

《・・・・・・・・・10万》
「分かった。一日で帰国してやろう」
《早っ》
「11万も取りに行くからな」
《はぁ!?ちょっと値上がりしてn》

皆まで言わせぬまま私は電話を切った。

うん、日本に行くのが楽しみになってきたな。










×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -