いつもより早く任務が終わりさっさと教団へ入ろうとしていた途中だった。
めんどくさいことに、聞こえてきた。
これは、間違いなくあいつだ。
スルーしたいが、何故かそれができない。だから、めんどくさい。

「チッ・・・」

舌打ちをしたあと、すぐに音のする方へ足を運ぶ。いや、例え耳を塞いでいてもあいつのいるとこぐらいは分かる。特別墓地だ。
角を曲がりほんの少しだけ歩くと、すぐに見えてくる。
やはり、居た。

「〜♪」

発音は、正直聞き取れない。日本語は使えるし、英語も日常で使っているのだからそれ以外の言語だろう。

「おい」
「あ、おかえり」

名前は振り返ると俺に笑いかける。
この前までは死んだような目をしていたのに、ずいぶん笑えるようになったもんだ。

「いい加減止めたらどうだ。人が死ぬなんて今に始まったことじゃねぇ」
「そうなんだけどね」

墓を見たのかと思ったが、どうやらその奥のもっと遠い景色を見ているらしい。

「ほら、安らかに眠ってくれたら、この子もアクマになることはないんじゃないかな、って」
「こいつをアクマにしようと考える奴なんざてめぇしかいねぇよ」
「確かに」

でもね、と名前は続けた。

「こういうのって、気持ちの問題で。私が満足したいだけなんだよ」

だから歌わせて、と困ったように笑う名前の顔を見て、目を伏せた。





歌え。





その声が届くまで。




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