テスト期間にもなると流石に部活は休みになる。バスケ強豪となる秀徳も例には漏れず、高尾は体育館を恋しそうに見つめていた。

「早く部活してーよー」
「まだテスト期間一日目だ、馬鹿め」

目の前の相棒こと真ちゃんはものすごいスピードで数式を解いている。クラスは違えど自分が知る限り緑間が一番頭が良い。だから教えてもらおうとわざわざここへ来たのだが、相手にしてくれる雰囲気ではなかった。

「真ちゃんここ分かんねーんだけど」
「俺はお前のために残っているわけではないのだよ、自分で考えろ」

そう言いつつ一瞬だけ俺が指した問題を見てくれるのだからこいつは本当にツンデレだ。というか、今何となく聞き逃せない言葉を聞いた気がする。

(俺のために残ってるわけじゃないっつーと、誰か待ってんのか?)

考えすぎのような気もした。が、もしこの読みが当たっていれば、もうすぐ来るのは真ちゃんの待ち人。これは無条件で気になる。男か、女か。まぁ真ちゃんが待つぐらいだから、バスケ関係であることは間違いないだろう。黒子か?
そんなことを考えながら教科書を眺めていると、ドタバタと廊下を走る音が聞こえた。すると漸く真ちゃんが顔をあげる。

「遅いぞ」
「ごめーん。生活指導で捕まっててさぁ」

いやほんとごめんねー、とだるそうに手を合わせて真ちゃんの前の席に座るのは、ヤンキーで有名な名字。性別は女。多分バスケとは無関係。

「えぇぇぇぇ?!真ちゃんが、真ちゃんが!?女の子待ってた?!えぇぇぇぇ?!」
「うるさい。お前は早く帰るのだよ」
「ちょ、え、彼女?彼女なの?」

笑いが込み上げてきて止まらない。ぷすす、と閉じた口の隙間から漏れてくる笑いをギリギリのところで爆発だけは堪えていると、名字からガン飛ばされた。

「べんきょー教えてもらうだけ」
「へ、ぇ〜」
「約束だからな。仕方ない」

始めるぞ、と教科書をめくりながら懇切丁寧に教えていく真ちゃんが、どうも普段と表情が違うから、邪魔しちゃ悪いかなーなんて気を利かせて出ていくことにした。










「ってことがあったんだけど、何か知ってるー?」

家について(テスト勉強をしないので)暇だから、気になって黒子に連絡を取ってみる。すると案の定『知りません』と一刀両断された。

「だって、ほんとにヤンキーみたいな奴なんだぜ?気にならねーの?」
「気にならないと言えば嘘になりますが…緑間くんも男ですから」
「そーだけどよぉ」
「……でも、帝光にいたとき、緑間くんは年上の女性がタイプだと言ってました」

年上の女性。
それを聞いた瞬間、先程の我慢していた笑いと一緒に口から吹き出した。

「まじかよ!もー、真ちゃんいろいろ意外すぎ!」
「あの、テスト勉強するので切りますね」

有無を言わさずブツリ、と通話か遮断される。ダメだ、気になる。しかし今から学校に戻ったところで邪魔になるだけだろう。よし明日こってり聞き出すとしよう、と心に決め、しょうがないのでテスト勉強を始めた。

その数分後、黒子に数学聞けばよかったと後悔した。




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