人を殺すことなんて、今更過ぎて泣くことも笑うことも無くなった。
最初に人を殺めたときはありとあらゆる不安に押しつぶされそうになったのを覚えている。
こんな大きなマフィアに入っているのだから警察に掴まるなんてありえないのだが。
そうして気付くのだ。
また自分を守ることしか考えていないのだ、と。
慣れてきた頃には自分は何てすごいんだろうと嘲笑うようなこともあった。
だがそれもベルと変わらないんだと分かったとき、愕然とした。

(どうでもよくなったのかな)

成功率が高いのがヴァリアーの売り。
今まで失敗したことがないのが自分の売り。

なのに、あんなに余裕だった自分が、敵に後れを取って血を流しているなんて、滑稽でしかない。

「う"おぉい」
「なに?」

うるさい声の同僚がずかずかと歩いてきた。

失敗したから、処分だろうか?
軽ければ一週間謹慎。
重ければ即殺される。

「さっさと治せぇ。雨の中でも臭いが分かるぐらいだ、相当な量だろぉ?」

だったら何だって言うんだ。

幹部クラスが任務失敗したのだ。
責任を取ることは間違いない。

「そうよ、そして死ぬの」
「必要がねぇ」

「じゃあ、流してよ」

「何がだぁ」


「私の罪を、全部」


この血に全て込めるから。

「流してよ」

でないと、心がつぶれそうだから。

すべてを流す村雨。

貴方だったら、できるでしょう?


そう呟いた私の身体を、このバカは酷く温かい手で抱き締めてくれた。




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