晴れた日に



ある晴れた日に、その事件は起こった。










「今日は二人一組で、柔道を行ってもらう。今ではモビルスーツ戦がメインだが、基本となる体の動きを相手から直接読み取るにはやはり体術が一番だ。これを行う事によって、機械仕掛けではあるがモビルスーツ同士の戦いでも相手の予備動作を掴み、次の攻撃パターンが分かる訳だ」

なるほど、とナマエ・ミョウジは頷く。
この教官の言うことはもっともで、モビルスーツに乗るには体力が無ければ話にならない。その不足分の体力と実践でも使える能力を同時にレベルアップしていくのだから、この講義は有効だ。

「毎年なら赤服同士、緑服同士で戦わせるんだが、生憎今年は女もいるからな。今回は男女別と言うことで」

ナマエはムッとすると前で仁王立ちしている教官を睨み付ける。女だからってバカにするな!と叫びたくなる感情を必死にこらえた。

彼女が女であることに間違いはないが、これでも総合成績は(ディアッカ・エルスマンを差し置いて)4位で、その4位は男女の体力の差の問題でしかなく、学力はアカデミー最強の男アスラン・ザラに匹敵するほど。

「ま、仕方ないか」

ナマエは肩をすくめると、友達に相手をしてくれと頼んだ。普通はアカデミートップ10のみに送られる赤服を着ている者と戦いたがらないが、友達はむしろ『赤服の人と戦える何て滅多にないことじゃない!』と目を輝かせている。


この時、相手を男に選んでおけば、あの事件は起こらなかったかも知れない。










「キャアッ」

友達を一本背負いし、優しく地面に叩きつける。すると教官がちゃかすために笑いだした。

「ミョウジ、女相手に骨折らすなよ!」

カチーン、と来たのも無理はなく、ナマエは無意識のうちに近くにいた男を教官に向かって投げた。

馬鹿力。
教官直撃。
そして投げられた男は、


イザーク・ジュール。










「ごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんッ!!」

ひたすらにごめんを連呼していくナマエと、一応着いてきたディアッカ。
イザークはさっきから一言も話さず、ただ直撃した額を氷で冷やしている。ナマエはその間も謝り倒し、そして願いが通じたのかイザークが口を開いた。

「そんなに気にしないでください」

・・・・・・・・・・・・・・・誰?

イザークのアイスブルーの瞳がまっすぐナマエを見つめる。その瞳に怒気はなく、ナマエは直ぐに罠だと気づいた。

「あぁ、今の声はニコルね?」
「そう思いてぇけど、ニコルいねぇよ」
「じゃあ今の声は誰の?」
「私ですが何か?」

そう言ったのは、間違いなく目の前にいるイザーク本人で。

「「キモッ!!」」

ナマエとディアッカは息ぴったりで同時にすごい勢いで後退した。










「どうしよ・・・」

ナマエの沈んだ表情が、ニコルの怒りを募らせる。

「ナマエが悪いんじゃ有りません!ちゃんと受け身を取らなかったあのおかっぱが悪いんですよ!」

ニコル・・・?

イザークの事をおかっぱ呼ばわりしたニコルに皆の視線が集中する。するとニコルは顔をしかめて、話聞いてます?と問いかけた。

(いや、聞いてたけどさ、ニコルって・・・)
(腹黒だぞ、知らなかったのか?)

知りませんでした。

以上の三つの文がナマエとアスランの会話である。

「そんなことよりさ、俺、あのイザークとは話せねぇよ(気持ち悪くて)」
「僕もですよ。何とかしてもとに戻せませんか?」
「なんとかって、やっぱりメジャーにもう一度同じように教官に投げつけるとか、ナマエが」
「やだよ!あのあとアカデミー内の全部のトイレ掃除大変だったんだから!」
「もとはと言えばナマエが我慢できなかったのが悪いんだろう?ならナマエが何とかするべきだ(普段吠えられなくなったのはありがたいけど)」
「うっ・・・」

それはそうだが。
っていうかやっぱり責任を取るべきだろうか?

「分かったよ!投げればいいんでしょ、投げれば!」










「ほんとにやるの?」
「何を今さら」
「ほら、俺も協力するから」

今日は偽イザークと柔道のコンビを組み、また教官に投げつけるという荒業をやってのける予定だ。間違いなく厳しい処分が下るだろう。

「うー・・・」

ちらっとイザークを見ると、少し困ったような顔をしていて、なんだかとても申し訳なくなってきた。

「ほんとにいいの?」
「本当の私では無いのでしょう?でしたら大丈夫です。あなたが気にする必要はありません」

美しい微笑みを向けられ、でもその表情は少し悲しそうで、ナマエは顔を真っ赤にすると急いで視線を逸らした。

「後悔してもしらないから・・・・・・っ」

するとナマエはようやくイザークの襟を掴み、勢い良く教官に投げた。

「っ・・・・・・」

衝突と同時にイザークは頭を抱え痛そうに蹲り、教官は倒れたまま動かない。これは少しまずい事をしたか、と近づくと・・・・・・

「ナマエ、貴様!!血祭りに上げてやる!!」

イザークの怒声。
あぁ、いつものイザークだ、とナマエはホッとし、やーだよーーーーと良いながら走って逃げていく。


別にさ、あの時のあなたがイザークじゃないなんて言わないよ。
彼もイザークだし、今ここにいるのもイザーク。

でもさ、

やっぱり、







怒鳴ってこそイザークじゃない?










それはある晴れた日のできごと。












あとがき
相互記念に書かせていただいた作品です。
PCサイトではフィーア様のお名前をいれることができたのですが、なにぶん携帯サイトは初めてなので、勝手がわからず名前をナマエと書き換えました。
フィーア様、申し訳ありません。
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -