昔、母から聞いたおとぎ話はもちろん作り話とは分かっているが、それでももしかしたら白馬に乗った王子様が囚われの姫である私を迎えに来てくれるんじゃないのかな、とか思ったりするわけで。

「ほんとに来た……」

ただしその人は白馬じゃなくて陸地なのに鮫に乗っていて、真っ黒な服を着て、お姫様であるはずの私よりもキレイな銀色の髪を持っていた。
予想外のことばかりだったけど、何よりも驚いたのが

「てめぇを殺しに来た」

私を助けるための王子様なんかじゃなかったことだ。





本人は自分のことを殺し屋だと言った。ずっとここにいた私は殺される理由がわからない。逆に親に閉じ込められるようにここで生きていたのだから何もできなかったし、人違いじゃないですか?とまで聞いたぐらい、私は人様に恨まれるようなこともしていない。

「いや、親にここにずっといさせられたんなら、やはりお前で間違いねぇ」
「どういうこと?」
「あ"ぁ?知らねぇのかぁ?お前の両親は二人とも俺らの敵対マフィアのお偉いさんでなぁ。娘の安全を守るとかでずっと外に出させてなかったっていう情報も入ってんだぁ」

だから俺はてめぇを殺しに来た。

そう言いながらも剣を抜かないその人。見ればその人の目は私を睨むように見つめていた。

「名前は?」
「ナマエです」
「そうかぁ」

その人はゆっくり剣を抜く。抜いた時が死ぬときだと思っていたから、剣先を向けてくる美しい姿が見れたのは、最後の幸せかもしれない。

「約束守ってやれなくて悪かったなぁ」

自分が息絶えるまでにその一言を理解できたことが奇跡かもしれない。
血溜まりが広がっていく中、私はその人に微笑むことができ、









刈り取る者





『おいナマエ』
『なーに?』
『おとなになったら、おれがナマエをむかえにいくからなぁ』
『うん!まってるね!スクアーロ!』

(その日は、私の二十歳の誕生日。)







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