例えるなら、サウナだろうか。
人がごった返して熱気に包まれていて、汗をかくのは慣れていても、こんなに押されることはない。緑間クラスになると三人に押さえられたりすることもあるかもしれないけど、パスに特化した俺にマークがついてもせいぜい一人だ。だから、今の状況に困っている。

「いいよなー真ちゃんは!余裕で見えるんじゃねーの?!」
「お前も平均よりは高いだろう!というより、なぜ俺はここにいなくてはならないのだよ?!」
「花梨と名前ちゃんに見に行くって行ったじゃん!」

そう言う意味じゃないのだよ!と真ちゃんの叫んだ言葉はなんとか拾えたが、会話も困難ってなんだこの状態。
ここ、特設ライブ会場は、おいおい今から始まるのはアイドルかプロのバンドかって言うぐらいの、尋常じゃない賑わい。これが全て名前ちゃんや花梨たちに向けられていると思うと本当にすごい。

その時、地を割るような歓声が鳴り響く。

『みんなー!!学園祭リクエストに指名してくれてありがとー!!』

「花梨ちゃーん!」
「たけっちー!」
「うぉぉぉぉ如月先輩美しいぃぃぃぃ!!」

花梨の一声と共にステージにライトが集中する。センターに立つのは花梨で、隅の方でベースを抱えているのが名前ちゃん。他にもよくぞここまでイケメンを集めたもんだってぐらいレベルの高い男女が何人か。それにしたって舞台に立つ花梨は普段よりも倍以上輝いて見える。

(やっべ)

見とれる。視線が、集中してしまう。これが試合じゃなくてよかった。ホークアイが使い物にならないなんて、冗談じゃない。

『じゃあ聞いてくださいっ!ALWAYS!』

もう、視線は外せない。





プロorアマ





(圧倒的な歌唱力と表現力に、視線と心臓を奪われた。なーんて、な……)
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