ガヤガヤとにぎわう大学のキャンパス。全く緊張感のないこの空気は受験会場として開いていないことぐらいは分かるだろう。そう、このゆるゆるでやかましいのは他でもない学園祭だ。出店がキャンパスの道端に並び、この屋台ならではの旨そうな匂いが立ち込めている。やっぱ祭りと言えばこれだよなー!と隣を(珍しく)歩いている緑間真太郎に言えば、めんどくさそうに見下ろされた。

「呼び出したと思えばこれか。くだらん。俺は暇ではないのだよ」
「つっても、時間はあるからこれたんだろー?」

だったら少しぐらい付き合えよー、と笑えば今度はため息をつかれる。ひでー。
大学生になって、学校はバラバラになってしまったが、こうして交流はあるからきっと嫌われてはいないはずだ。
ぶらぶらとキャンパス内を歩いていると、おろおろと迷子になっているらしい女の子を発見した。小さい子だから、おそらく遊びに来たかなんかだろう。大学の学園祭は一般にも公開してるから、誰か兄弟の発表でも見に来たのかもしれない。ひょい、と側で屈んでやればびっくりしたように、丸い目を見開かれた。

「迷子ー?」
「う、ん。おにーちゃんも?」
「おにーちゃんは迷子じゃねーけど……きみ、お姉ちゃんかお兄ちゃんは?」
「ひーのおねーちゃん、がっきふいてるの!きょうはおねーちゃんをみにきたんだよ!」
「(ひーちゃん、ね)楽器ってことは、吹奏楽部?」
「うん!」
「じゃ、ひーちゃん!一緒にお姉ちゃん探すか!」

ぽんぽん、と頭を撫でて緑間を振り返ると、手に持っていた学園祭の日程表を見ていた。

「吹奏楽部なら発表は明日だが、逆に言えば今日はリハーサルなのだよ」
「ってことは1日間違えて来たのか。まぁ、リハならすぐ会えるだろ」

吹奏楽部の練習場所ならすぐに分かる。音がする方に行けば良いんだから。ひーちゃんと手を繋ぐと、きゃーきゃー言いながらお姉ちゃんを探す旅に出た。ちなみに緑間から冷たい目で見られていたのは、気にしないことにする。










「高尾くんありがとう!」

ひーちゃん改めひかりちゃんのお姉ちゃんは同じ学部の海ちゃんだった。どうりでどっかで見たことある顔だと思ったと一人納得。ひかりちゃんにばいばーいと手を振って別れると、緑間から痛い視線が来た。

「どーした真ちゃん?あ、もしかして相棒の俺がひーちゃんに取られて不満だった?」
「いや、お前がそう言う趣味を持っていたのかと思ったら引いただけだ」
「はぁ!?俺、別にロリコンじゃねーし!」
「妹か?」
「ちげーって!女の子が困ってるのほっといたら、紳士じゃねーだろ?」
「お前がいまだかつて紳士であったところを見たことがないのだよ。バカ笑いをして人をからかうのが紳士というのなら話は別だが」
「ちょ!真ちゃん!」

何を勘違いしているのか知らねえけど、俺は別にそう言う趣味があるわけじゃない。ただ純粋に、女の子を雑に扱っては行けないと思っているだけだ。困ってたら助けるし、そう、レディーファーストの精神。

「っつーこと!分かった?」
「そう言うことにしといてやるのだよ」

納得いかねー答えが帰ってきたが、もうこの際気にしない。吹奏楽部の練習場所から出ると、大きな機材を運んでいる行列が見えた。中に軽そうなギターやらを担いでいる人が見えるから、軽音楽部かサークルだろう。衣装は、統制が取れている吹奏楽部と違ってみんな自由な服装で、中にはめちゃくちゃセンスがよくてかっこいいやつも混ざっている。すげーなー、なんて見送っていると、真っ黒で地味そうな服を着た奴が、よろよろしながらでかいアンプを一人で運んでいて、頑張ってんなーと傍観する。

「いいのか?」
「何が?」
「………やはりお前はそう言う趣味を持つ傾向があるようだな」

大荷物の行列がお通りなさった後、緑間が呟いた言葉に、首をかしげる。まぁ確かに女性でギター担いでいる人もいたけど、重いからと言って困っている奴はいなかったし。どーゆーことだよ、と緑間に尋ねると、呆れたようにため息をつかれた。

「その目は節穴か。女性が困っていたら助けるというのは良いことだと思うが、まず女性を認識できなければ、相手の女性にも失礼なのだよ」

ホークアイも試合以外では意味がないのかと嘲笑されてムッと顔をしかめる。

「見てみろ、あのアンプを運んでいる奴を」

緑間が視線だけで相手を教える。それはさっきまで見ていた地味な奴だ。

「女子なのだよ」
「えっ、えぇ?!」

そういえば線は細いし、足首とか折れそうなぐらいだし、でも確かに胸はなかったし、髪の毛はけっこう短いし、あれが、女?

「うそ」
「あの女子の代わりに言ってやる。最低なのだよ」





男or女





(超鈍いこいつに言われると思ってなかったよ。ほんとに。)
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