今日という日はハロウィンで、男子はイタズラ目当てに、女子は作ってきたお菓子を振る舞ったり買ったもので交換するみたいな行事になっている。男子の俺はもちろんイタズラ目当てにいろんな人に『トリックオアトリート!』と言いまくってはお菓子を奪うか、奪えなかったやつは全力でくすぐるとかそんな下らないことをやっている。
そんな中でチラリと名前ちゃんを盗み見ると、俺の男子友達からお菓子を集られているが、これは予定通りなので嫉妬などしない。あいつらにお菓子全てを回収してくださいってお願いしたのは他でもない俺だ。

「おい高尾。菓子寄越せ」
「あ、この貰ったやつじゃダメ?」

なんてボーッとしていたら同じクラスの奴から、まさかの復讐トリックオアトリートが来て、俺はくすぐるだけのおちゃめなイタズラだったのに、こいつらはサイダーをぶっかけてくれやがった。文句のひとつでも言ってやろうと思ったが、タイミング悪く先生が来るとかで、納得いかないものの自分の席につく。ちなみに俺の席はラッキーなことに名前ちゃんの前だ。
それにしてもシャツびしょびしょで気持ちわりー、と服をつまんでいると、後ろからツンツンと背中をつつかれる。この控えめにつついてくる子なんて、一人しかいないから、ちょっと嬉しくなりながら振り返った。

「ん?」
「…………」

やはり目を見て話してくれることはないけど、差し出されたのはハンカチ。控えめな彼女に相応しい桜模様が刺繍された薄いピンクのそれを、手に取る。

「え、貸してくれんの?」

そう言えばこくりと頷いてくれて、なんだ仲良くなれてるじゃんなんて嬉しくなった。

「さんきゅーな!」

そう言って嬉しさを隠しもせず笑顔を向ければ、彼女はみるみるうちに赤くなって、うつ向いてしまった。それでも視線をちらちら寄越してくる辺り、これ、意識されてるんじゃねーの?なーんて。

そんなことをニヤニヤしながら考えていたら、怒った先生の言葉なんてなにも入ってこなかった。





ハンカチと君の頬




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