今日はハロウィンだと真太郎に教えてもらい、さらに今日のラッキーアイテムはお菓子なのだよ、と大量のキャンディーを渡されて、登校してきた。すると友達から『Trick or Treat』を連呼され、普段喋らない男子生徒からも言われたので、午前中だけでキャンディーは売り切れ。でもほとぼりが冷めたのか、それ以降誰も何も言ってこないのでほっとしている。

(だってイタズラって……)

クラスの中心で騒いでいる男子たちを、高尾くんをチラリと盗み見る。あのウインク事件から、どうしても彼を盗み見てしまう。目が会おうものなら全力で逸らしてしまうし、その後まだ見られてると思うと顔が爆発的に熱くなる。
そんな高尾くんは、手当たり次第にお菓子を強奪していっているが、仲の良い男子に言われ返されて、硬直している。

「あ、この貰ったやつじゃダメ?」
「いいわけねーだろ!よっしゃ、高尾罰ゲーム決定!」
「おい!そこのサイダーとってこい!」
「ちょ!まじ!これから部活だから止めろって!」

そして残念なことに、シェイク済みのサイダーを口を向けて開けられ、サイダーまみれになる高尾くん。髪の毛もびしょびしょで、水も滴るっていうけれど、糖分を含んだ水はきっと気持ち悪いだろう。

(あぅ……あれがトリックを選んだ者の末路なのですね)

真太郎からもらったキャンディーはもうないし、もし次誰かに言われたら私もサイダーまみれになるのかと思うと怖い。服の代えなんて持ってきているわけがないし。

「ってか床までびしょびしょじゃん!もうすぐHRで先生来るぞ!」
「やっべ!早く片付けろ!」

この前の席替えで幸か不幸か高尾くんは前の座席になって、びしょびしょのシャツを気持ち悪そうに摘まみながらどかっと座る。
緊張しながらもツンツンと高尾くんの背中を突っつくと、やはりシャツはびしょびしょだった。

「ん?」
「…………」

やはり目を見て話せないので、黙ってハンカチを差し出す。こんな小さな布一枚じゃ不十分なんだろうけど、無いよりはましだ。

「え、貸してくれんの?」
「…………」
「さんきゅーな!」

ニッコリとお日様見たいに笑う高尾くん。顔が赤くなっていくのを気づかれないようにさっと下を向いてしまって、もう少しあの笑顔を見たかったな、ともったいない気分になった。

そして入ってきた先生に怒鳴られたのは言うまでもない。





炭酸水とはじける





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