体育の授業というのは、黄瀬にとってはあまりありがたくない授業の一つだった。何しろ大抵のスポーツはできてしまうし、一番楽しいと思えるバスケだってキセキの世代と呼ばれる彼らと戦わなければ『大抵のスポーツ』に分類されてしまう。

(ま、今は普通に楽しいんスけど。バスケ)

そのバスケ特有のドリブル音は体育館を半分に割った隣のコートから聞こえてくる。最近は授業の関係上、1年F組と共有して使っていた。どうして1年のクラスまで特定できたかと言うと、

「頑張れ名字さーん!」

自分の授業であるバドミントンそっちのけで名前の応援をしていたからだ。確か赤司が彼女のクラスはF組だと言っていた気がする。黄瀬が毎回応援するものだから、黄瀬の周りの男子たちもふざけて応援し始める。軽くファンクラブ状態なのだが、黄瀬の声が聞こえるとよりいっそう名前は嫌そうな顔をするのだ。

「名前ちゃーん!」
「がんばれー!」

男たちの野太い声も後に続く。すると名前は溜め息をついた。どうしたんだろうと思ってみていると、名前がスタスタとこちらに歩いてくる。

「そっちの授業に集中しなさいっ!」

初めて聞いた怒鳴り声に、何故か妙な感動を覚えたのは、自分だけじゃないはずだ。





微妙な距離感





(自分が置かれている立場をちゃんと理解していれば、こんな風には接していなかったかもしれないっス。)
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