メールは1日に数通。それも『お腹減った』だとか『野球部がホームラン打った』とかそんな内容をぐだぐだと続けていた数日後、青峰から電話が来た。内容は体育館に来い、と言うもので、どうして私が学校にいることを知っているんだ千里眼かこの野郎まちがえたあの先輩、なんて瞬時に思う。一方的にかかってきた電話は一方的に切られて、仕方ない、と屋上に散らかった画材やらを片付けて美術室へそれらを置いた後、自分の鞄を担いで体育館に向かった。

「うーん、場違い」

とりあえず体育館シューズに履き替え体育館に入ると、バスケ部が占領しているため平均的に長身なくそ羨ましい男たちがいた。そののっぽたちから『なんだこいつ』という目で見られて、長年培われた下から見下すという高等技術をやってのける。するとびびったのっぽたちは去っていった。
キョロキョロと見渡しても青峰らしい人間はいない。困った、と頬をかいていると、お腹に圧迫感。そして視点が高くなり、ハッとして見ると青峰が俵担ぎをしている。

「下ろせ、てください。青峰せんぱいー」
「おい今命令しただろ」
「何を言うんですか。私がそんな愚かな真似をするはずないですよてへぺろ」
「てへぺろって。言うんじゃねーよ」
「やだ、先輩『てへぺろ』なんて似合いませんよ」
「ちげーよ!」

おお何と言う攻防戦、なんて感動しているともう一個の普段授業では使われていない大きな体育館に運ばれる。そうかバスケ部の一軍や二軍はこっちで練習だったかしくじった、とため息をついた。

「おい、連れてきたぞ」

もうひとつの体育館に入り降ろされると、頭の派手な人達から一斉に注目を浴びる。でかい。

「あ、」
「名前ちん久しぶりー」

ヒラヒラと手を振る巨体。目に悪そうな紫色の頭は忘れようとしても忘れられなかったあの人だ。

「お久しぶりです。あの時はありがとうございました」

まさかこの為だけに呼ばれたのではあるまい、と青峰を見ると良く分からない返事をされた。

「なんか皆ちょっとずつお前のこと知ってたみたいで、さつきも会いたいって言うから連れてきただけだ」
「で、さつきさんは……ピンク?」
「あなたが名前ちゃんね!ちっちゃくてかわいい!」
「ちっちゃ………これはまだ成長期が来ていないだけで、まだこれから伸びますー」
「名字さんは美術部なんスよね?これ、この前階段に落ちてたっスよ!」
「あ、ラベル。ありがとうございます。生徒会に未登録の絵が飾られているって苦情が来てて……」
「どこの誰だ?後で絞めておくよ」
「あ、いえ、結構です。ラベル見つかったので。あ、緑間先輩ってこの人ですか?」
「俺が緑間真太郎だ」
「遅くなってすみません。司書の人が機会があったらこの小説直接渡してあげたら?って言われてたので」
「あ、りがとうなのだよ」
「ということは、この人が黒子先輩ですか?」

水色の髪の毛の先輩を見ながら問うと、全体に衝撃が走った。何か変なことをいったのだろうか、と青峰を見ると、こいつもこいつで似たような顔をしている。

「お前……テツが見えたのか」
「何でですか?」
「だって、なぁ」
「良かったな、黒子。初めてじゃないか?初対面で自分から見つけてくれた人は」
「…そう、ですね」
「へ?」

聞いていればこの先輩は影が薄くて人に気づかれないんだとか。だから気づいた私は非常にレアらしい。希少価値。うん、すてき。

「あの、西階段のあの書斎の絵、名字さんが描いたんですよね?」
「うん、あ、はい」
「その…すごかったです。見た瞬間、泣いてしまいました」

あの絵のことか、とふと思い返す。
それほどまでにすごい絵なら自分たちも見たいと言い出す、のっぽたち。物好きですな、と言って鼻で笑えば青峰に叩かれた。

「名字」
「あ、はい」
「練習終わりまで待っておけ。今日はもともと部活が早く終わる予定だったんだ」
「そうなんスか?!」
「今朝のミーティングで言っただろう。どこかの誰かさんたちが調子に乗ってダンクシュートばかり打つからゴールが取れたコートが増えたんだ。だから、修理のために業者が入るからね」
「じゃあ決まりだな。待っとけよ」
「……場所、知ってるんですよね。黒子先輩」
「はい」
「じゃあ案内しといてください」
「名字」
「………は、い。あ…でも、また今度で良いですか」

自分がそんなことを言うなんて思ってもいなかった。
また今度って、無理に会う約束を取り付けて。

(あ、そっか)

「また今度?いいよ、じゃあ連絡は青峰に入れさせるから」
「名前ちんの絵、楽しみー」
「やっとあのラベルが元のところに戻るんスね!よかった〜」

なんだ、話し相手ができて嬉しいんじゃないか。






巡り会う奇跡





(何事もなく過ごしていた生活に、光が差した。)
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