今自分は正座をさせられて、ナマエさんからお説教をくらっている。これは完璧に自分に非があって、ナマエさんはそれを助けてくれたんだから素直に話を聞いている。

「例え一般人でもナチュラルを毛嫌いしてる人だっているの。彼らがそうでなくてもどこで聞かれてるか分からないんだから」
(しかも説教の内容が、俺の安全の為なんスよねー)

もうごもっともです、とナマエさんの話に大きく相づちを打つ。するとナマエさんは、言い終えたのかソファーにぽふっと腰をおろした。涼太もいいよ、とソファーを叩くからそこへ足を運ぶ。お説教と言っても時間は僅か数分。足がしびれることもなく、本当にナマエさんって優しいなー、と改めて思った。
パッと隣に座る彼女を見る。と、どうしても意識してしまうのは、唇。良く見なくてもナマエさんは美人だ。あの色っぽい唇にキスされたのか、と思うと頭がくらくらしてくる。変態?違う、だって男の子なんだ、これぐらい、普通だ。
でも雑念を払おうと別のことを考える。そういえばナマエさんはキスに関して一切触れてこなかった。自分を助けるために、さも当然のようにキスをしてきたナマエさん。もしかして、この世界ではキスは日常的なもの?でもあの不良たちは冷やかしたぐらいだから、違うだろう。じゃあナマエさんは、慣れているんだろうか。

「えっと、ナマエさん」
「何?」
「ナマエさんって、その、キスとか良くするんスか?ほら、職場が軍って、男とか多そうだし……」
「私がそんな節操の無い女に見えるなら侵害だわ。キスはあなたが初めてよ」

初めて、ということは、

「ファーストキス、俺になったってことっスか……?」
「そう言ってるじゃない。涼太は?プレイボーイっぽいけど」
「あー、彼女はいたんでキスとかは……あっ、今はいないっスよ!」
「そうなんだ」
「ナマエさんは、彼氏って……」
「好きな人なら、いたわ。彼氏ではないけど」

ふとナマエさんが見たのは写真立て。そこには今とは違うタイプの紅い制服を来たナマエさんと同級生と思われる人たちが写っている。この数日間でいっぱいナマエさんを見てきたけど、新しい表情をしていた。過去を懐かしむような、それでいて悲しそうな、不思議な表情だ。

「告白、しなかったんスか?」
「したかったけど、死んだの。戦争だからしかたないけど、私の目の前で死なれたのは、ちょっとね」

写真から目を離したナマエさんはニコリと綺麗な笑顔で笑ってくれて、彼女にこんな表情をさせる人ってどんな人なんだろうと今度は自分の目が写真を見つめる。

「あ、しんみりさせてごめんなさい」
「いや、いいっス。そ、れより!ナマエさんって軍人でも細い方っスけど、大丈夫なんスか?」
「モビルスーツに乗るから、肉弾戦なんかよりは断然楽よ」
「えっ!モビルスーツってガンダムっスか?!」

ガンダムならアニメで小さい頃みたことがあるから知ってる。もしかしてここはアニメの世界なのかと目を輝かせるとナマエさんも驚いたように目を開いていた。

「ガンダムって…ふふっ、知ってるんだ」
「ってことはナマエさんってパイロットなんスね。すごいっス!」
「それほどでもないわ。パイロットは結構いるもの。それよりも色担当の方がレアよね」
「色?」

ナマエさんが艶やかな笑みで隣に座る自分に擦り寄ってくる。ぞくり、と体が震えた。

「自覚はないんだけど、私は結構コーディネイターでも美人らしいの」
「そっ、スね」
「だから、相手のお偉いさんに取り入るの。こうやって」

ぐっと手首を捕まれて、ソファーに押し倒される。ナマエさんの足が、自分の太ももを撫でた。

「えっ、ちょ、」

ナマエさんが屈んでくる。はだけた軍服から覗く、白い肌。鎖骨。やばいやばいやばい。
顔がゆっくりと近づいてきて、自分はあわてて目をぎゅっと閉じた。

「っ………」

見えなくなったおかげで(自分が目を閉じたせいだけど)音だけが随分とクリアに聞こえる。そこでやっとナマエさんにからかわれたのだと分かった。クスクスと笑い声が聞こえる。

「そんなうぶな反応されると思わなかったわ」
「ひっ、ひどいっスよ!」

まだクスクスと笑うナマエさんに、恥ずかしくなって、少しだけ期待した自分がいたことに気付かなかった。





For 7 days





(え、ってことはナマエさんキスは初めてっスけど、もしかして)
(それ以上のことなら経験済みよ。仕事の関係上、だけど)
((割りきってるところが大人っス……!))




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