こういうものは特別な何かではなく、もはや生きるためにつけていると言うべきか、そういった意味のものになりつつあった。
これそのものが私を生かしているのではなく、これを使って炎を灯し、敵を殺して、自分が生きる。
だから、目の前の男が『別の意味で』これを渡してきたときには、驚いた。
「どういう、こと?」
目の前には、今自分がつけている生きるための道具とは違った、いたってシンプルなもの。でも他のどんなものよりも負けないキレイな輝きを持っていて、自分の血に汚れた手が触れて良い物かどうか、戸惑ってしまう。
「どういうことって…そのまんまなのな」
結婚してほしい。
目の前にいる山本はまっすぐに自分を見つめて、そう言ってきた。
「でも、それどころじゃ」
「それどころじゃないのは分かってる。でも、もう、名前を守れるぐらい強くなったって、思ってるから」
それとも、ダメだった?
そう首を傾げて言う山本。顎に傷作って、バットから刀を持つようになって、変わったと思っていたけど、不安そうに揺れる瞳は子供のままだ。
「……ダメなんて、言うわけない」
それどころじゃないとは言ったけど、ずっと待っていたんだから。
溢れる涙をそっと拭き取って、箱からそれを取り出すと、左手を優しく取って、輝くそれを薬指にはめた。
「俺と、結婚してください」
「は、いっ……!」
飛び込むようにして抱きついたのに、山本はしっかり受け止めてくれて、自分はこれから彼と一緒に生きていくんだという夢を現実にしてくれたような気がした。
左手に光るは、