昼寝
アカデミーのお昼。
軍人育成の施設ではあるが、生徒のストレスを貯めないようにと軽く運動できる公園があり、芝生が綺麗に生えそろっている。おそらく事務の誰かが刈り取ってくれているのだろう。
そんな芝生に寝転がる少年が一人。
緑色の芝生とオレンジ色の髪がそよそよと風になびいていた。
「んー、眠い・・・・・・」
少年、ラスティ・マッケンジーは呟いた。
このまま寝てしまっても良いのだが、一時間もせずにすぐ次の講義が待っている。そして一度寝てしまったら起きる自信が無かった。
でも、眠いものは眠い。
睡魔に打ち勝とうとしてもやはり本能には敵わず(というより早々諦めて)ラスティは深い眠りに落ちた。
意識が戻ったとき、嫌な音が聞こえた。
これは、チャイムだ。
たぶん、講義の始まりか終わりの。
「ちょおぉぉぉぉおぉぉぉぉぉッ!!」
ぶんっ、と腕を振る音がしてラスティが起き上がると、可愛い声がした。
「あぁ?」
「あ、ごめんなさい・・・っ」
女の子が居た。両手でスカートを押さえている。
「どしたの?」
「いえ・・・その・・・・・・」
真っ赤な顔をして、少女はもぞもぞと答えだした。
「寝ておられたので・・・その、倒れているのかと思いまして・・・それで・・・」
「様子見に来てくれたの?」
少女はこくんと頷く。
(あ、可愛い)
茶色のくるくるとした髪に、同じ色の茶色い瞳。そして何故か頬が紅い。
「・・・・・・・・もしかして、僕何かした?」
「その・・・さっき起き上がられたときに・・・」
スカートをぎゅっと握りしめて。
あ、もしかしてやってしまった?
「あーーーーーーーーーー、ごめん」
スカートを、起き上がったときに捲ってしまったようだ。
(もったいなかったなぁ・・・)
是非とも拝見したかったりしたくなかったり。
「そ、そんなことよりさ、隣座りなよ」
一瞬躊躇した後、少女はちょこんと隣に座る。風が優しく頬を撫で、少女の髪の毛がふわっと揺れた。シャンプーの良い香りがする。あの髪の毛はきっともふもふしていて気持ちいいに違いない。無意識のうちに手を伸ばしていて、髪の毛を梳く。
「え?」
「あー、やっぱりもふもふ」
急に髪の毛を触られて、少女はびっくりしたようだ。
「そういや、名前聞いてなかったね。なんてーの?」
「あ・・・・ナマエです。・・・ナマエ・・・ミョウジ・・・・・・・」
にっこりとした笑顔で名前を呼んでみると、ナマエは顔を真っ赤にして俯いた。
ナマエののほほんとした空気にラスティは再び眠くなってくる。
「・・・・・・ナマエも昼寝しよーぜ」
「え?」
「あー、でもここだと出来ないか・・・」
何が出来ないのか理解できないナマエは首を傾げる。ラスティはきょろきょろと辺りを見回し、木陰を見つけるとそこまでナマエの手を引いて走り出した。
「あ、あの!!」
「んー、なにー?」
「授業は大丈夫なんですか?」
「あー、いーのいーの」
木陰を見つけると二人はその場に座り、ラスティはナマエに木にもたれ掛かるように言う。意味が分からないが仕方なくラスティの言われたとおりにもたれると、一瞬風が吹いて自分も眠くなってきた。
そして
「きゃっ・・・!!」
ラスティはナマエの膝枕を頂いていた。
「あー、青春青春」
「なななな何がですか!!」
青春じゃないの!!とラスティはにやりと笑ってナマエを見る。
「はぁ・・・まぁ、分からないこともないですが・・・」
また顔を真っ赤にするナマエは本当に可愛くて。
もうちょっと困らせてやろうとラスティは膝枕されたまま、おやすみーと一言告げると、本当に寝始めた。
「え、あの・・・すいませーん・・・寝ないでくださーい・・・」
ナマエの言葉もむなしく、ラスティはもう夢の中だ。
「もう・・・」
でも、憧れのパイロットがこんなに近くに居ることが嬉しくて。
ナマエは友達にも見せたことがないような優しい笑みを眠っているラスティに向け、自分も目を閉じた。
(あー、昼寝って出会いなのねー)
ラスティは眠りながらそう思ったとか。