先の大戦が終わって、二年が経とうとしていた。議長であるデュランダルの手腕で何とか安定化を図ってはいるが、最近雲行きが怪しいという情報も手に入っている。また彼が戦場に駆り出されることになるのだろうか、と不安になってきた。

「どうしたんですか?」

今日は一日中晴れで気温も安定していると言うことで、カフェの外テーブルでノートパソコンを開いてニュースを聞いていると、後から知った声が聞こえた。振り返ると、緑色のふわふわとした髪が目に入る。

「あ、ニコル」
「ただいま戻りました。何か珍しいニュースでもあったんですか?」
「ううん、特に。あ、でも…ブルーコスモスがこの前近くを襲撃してきたから、それで結構ネット上は賑わってるよ」

やっぱりコーディネイターは嫌われるよね、と苦笑いをすればニコルも同じように笑ってくれた。

「個別に嫌うのはどうしようもないですが、人種として嫌われるのはやっぱり辛いですね」

軍人としてそういった差別はある意味最前線で感じているのだ、彼は。それが急に遠い人のように思えて、少し寂しくなった。

「ニコルも大きくなったんだねー」
「どうしたんです?急に」
「昔は私の方が背が高くて力も強くて、小さなニコルを助けてあげてたよねー、って思っただけ」
「……いつまでも子供扱いしないで下さい」

拗ねてしまった彼にごめんごめんと謝ると、彼は逆に頬を膨らませる。ふざけていると思われたらしい。

「本当にごめんね」
「……分かりました」

ニコルがやっと笑ってくれる。それにホッとした。
そんな少し良い雰囲気の時だった。
ガチャ、という鈍い音の後に鳴り響く発砲音。振り返らずに手元を見れば、さっきまで見ていたニュースの文字が見えた。

(あ、ヤバイ?)

軍人であったわけでもないが、ナチュラルに嫌われているのは重々承知している。頭の回転が速いコーディネイターが叩き出した現状の答えは、『ブルーコスモスの襲撃』。体が傾くのが分かった。もしかして、自分は撃たれたのだろうか。

「った!」
「すみません、大丈夫ですか?」

頭を撃たれたのではなく、打った。テーブルはひっくり返っていて、銃弾から自分を守るように盾となっていた。そこに入るようにニコルが引き倒してくれたのだ。頭はまだ痛いけど。

「んー、大丈夫。生きるためなら、痛いのなんてへっちゃらだよ!」
「あ、ちょっと…」

ニコルは胸ポケットから何か変な物体を取り出した。するといきなりそれに向かって話し出すから、びっくりした。

「イザーク、僕です。現在地は、言わなくても電波は届いてますよね?ブルーコスモスが出ました。一応交戦はしますが、応援をお願いします」

ニコルが言ったことで、これからどうなるのかが理解できた。だから、急に怖くなる。思わずニコルの服の裾を掴んでいた。

「いっちゃうの?」
「……僕は、軍人ですから」
「でもっ、ニコル一人なんだよ?そんな、せめて応援が来るまで…」

この時自分はどんな表情をしていたんだろう。おかしな顔をしていたのかも知れない、ニコルがクスクス笑い出した。

「ナマエ、知ってましたか?」
「へ…?」
「僕、ナマエより年上で、もう身長も僕の方が高くて、軍人ですから力も強いですし、」


何より、男なんですよ。


ニコルが頭ををくしゃくしゃと撫でる。それだけでドキッとした。



「好きな人ぐらい、守らせて下さい」



返事も聞かずにその場を走り出したニコルに、帰ってきたらとりあえず自ら危険に飛び込んだことを怒ってやろうと、きっと赤いであろう自分の顔を顰めた。





(ちょっとブルーコスモスに感謝しなきゃ)












みい様リクエストで、ニコル甘夢でした!
種と運命の間のお話で、ニコル生存設定にしてみましたが、いかがでしたでしょうか?
リクエスト内容にお応えできてなかったらすみません(>_<)
みい様のみお持ち帰りOKです!
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