堅物で冷たいと言われる私だが、無論恋愛経験が無いわけではない。というより、妻がいる。当時人気ではあった私に見向きもせず毎日楽しそうに笑う彼女に恋をし、多くの敵を彼女に送り込むこととなったが、それでも彼女を傷つけることになるからと諦めずに思い続けた結果が、彼女の夫となることで落ち着いた。
落ち着いた、はずだった。

(まさか、こんな形で邪魔が入るとは……)

家のソファーで足を組みながらくつろいでいるふりはしているが、目の前の光景に内心気が気ではない。だが嫉妬するのも悔しいのだ、自分の従者相手に。

今日久しぶりに休みが取れ、しばらく大きな作戦も無いようだから帰宅しようとした。その時トンベリを連れて帰ろうか迷ったが珍しく尻尾をふって着いてきたがったために、今こうして家にいる。そしてその選択が誤りだった。

「トンベリって一応モンスターなのに、お肌ぷにぷにだね」
「♪」
「あ、かわいいっ」
「………」
「え?このお花、私に?ありがと」

久しぶりの帰宅だと言うのに、ナマエは始終トンベリに構っている。玄関に立ったときこそ視線を向けて『おかえりなさい』と言ってくれたが、トンベリの姿を視界に入れてから私の存在は完全に忘れられた。
まぁ普段一緒に居られない分帰って早々呆れるのも可哀想だと思い黙っていたが。

「きゃっ」

ナマエの可愛いらしい声に、トンベリからのキス。
それを見た瞬間、私はいつのまにかナマエの側に寄っていて、彼女を横抱きにしていた。

「トンベリ、ここで待機していろ」

声をかけると敬礼する辺り、素直で頼りがいのある従者だ。着いてこないことを確認すると彼女を横抱きにしたまま自室へと向かった。

「く、クラサメくん?」
「…………」
「怒ってる?」
「怒っては、いない」

自室に入って鍵をかけてしまうと、ナマエを極力優しくベッドへ下ろした。自分はベッドには乗らず、彼女の目の前にしゃがみこんだ。

「どうしたの?」
「分からないのか………?」

ナマエの目をまっすぐ見つめていると、さすがに恥ずかしくなったのか視線が落ちていく。苛めるのはここまでにしようか、と声をかけた。

「ナマエは、私の妻だろう?」
「う、ん」
「目の前で他のやつと仲良くされればな、」
「………」
「さすがに嫉妬ぐらいする」
「………え?」

トンベリ相手にみっともないと思われただろうか。だが感情を吐き出してしまえば案外楽だった。
立ち上がって彼女の後ろへ回る。抱き締めて首筋に顔を埋めると、彼女の肩がびくりと跳ねた。

「だから、」



頼む、今は私だけを見て欲しい



そう言えば、彼女は振り返って私を抱き締めてくれた。





(ふふっ、大きな子供が出来たみたい)
(その口、塞いでやろうか?)
(それができるのは旦那さまだけね。ぜひその特権でどうぞ?)
(……つくづく敵わないな、お前には)











一周年企画でロゼ様リクエストでした!
クラサメで嫉妬+いじける、ということでしたが、あまり出来ていませんでしたね(汗)
このような作品でよろしければロゼ様のみお持ち帰りOKです!
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