今日はまだ暦の上では春休みだけど、おバカな人たちは特別補習という名の先生からのありがたーい学年指導を受けるために集めさせられていた。言い訳みたいになるけど、私はバカじゃない。テストの日、体調が悪かっただけ。これ、ほんと。

「おい名前」

呼ばれて振り返れば今日の特別指導の先生のリボ田先生だった。どうしたんですか?と聞き返せばリボ田先生はくいっと親指で後ろを指した。

「山本が呼んでるぞ」

教室のドアから顔を見せてくれたのは、私の(恥ずかしながら)、イケメン彼氏である山本くん。駆け寄ればいつになく真剣な様子の彼が私の肩を掴んだ。

「名前」
「何?」

「俺たちさ、別れないか?」

さっきの表情に悪い予感はしていた。最近山本くんは沢田くんたちと何やら危ないことをしているという噂もあるし、私みたいな特に取り柄もない人間は飽きたんだろうな。

「理由、聞いても良い?」

うわ、めんどくさい女だな、私。たぶん山本くんもそう思ってるよ。恐る恐る下げていた目線を上げると、山本くんがにっこり笑っていた。

「エイプリルフールだから、だな!」

頭をぽんぽん、と撫でてくれる手が山本くんのだったから、ひどく安心した。
っていうかこれは騙されたことになるのかな?

「そういう冗談言う人だと思わなかった」
「え?名前?」
「さいてー。むしろこっちから別れてやるっ」
「あ、ごめんっ!本当にごめん!」
「嘘だよ」

やられたままでいる私ではないのです。

そう言って笑ってやったら山本くんの慌てた顔が嘘のように笑顔に変わった。










「にしても何であんなことを………」

山本くんと一緒に帰っている途中、公園に立ち寄ったら子供たちに囲まれて、今彼はその子供たちの相手をしているのです。一人ベンチに座っていると暇になるのは当たり前なのでついつい独り言を呟いていると、返事が返ってきた。

「エイプリルフールの迷信、知ってるか?」
「…リボ田先生…………?」

俺も今年初めて聞いたんだけどな、といつのまにか横に立っていたリボ田先生が夕日を見つめながらシリアスに語りだした。

「エイプリルフールについた嘘はその一年本当にならないっていうやつだ」

例えば『親が死んだ!』とかいうやつも、エイプリルフールに嘘として言えば親は一年間死なない、ということらしい。

「山本にも教えてやったら、あいつ『じゃあ俺名前に嘘ついてくる!』って言い出したからな。どうなるかと思ってたが、ガキみてぇだがかわいい『嘘』じゃねーか」

要するにこの一年別れないようにしたかったってこと?

そう思えばすっごく心臓がドキドキしてきた。私もそのあと似たような嘘ついたし、絶対別れないってことだよね?

「よかったな」


ニヤリと笑っているリボ田先生が、少しだけ天使に見えた。





4月バカのバカップル





(来年も同じ嘘をつこう)












この迷信に関しては、本当に今日初めて知った\(^o^)/
知り合いからその事を聞いて、ネタ神様が降りてきたからたすかったよ(笑)
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