最近の自分はひどくイラついていた。原因は分かっている。ナマエがカヅサと友達になったことだ。しかし、理由は分からない。何度も自分に問いかけては、堂々巡り。それの繰り返しだ。

(友人は友人だ。ナマエにとって俺は特別な………初めての友人であることに間違いはない。それは断定できる。では何が不満だ?)

最近一緒にいるところを見かけるようになったナマエとカヅサ。勿論こうやって自分を見かけたら彼女は笑顔でカヅサを放ってこちらに走ってきてくれる。だからすごく嬉しい。

「や。クラサメくん」

なのに、どうして、

「ナマエ、おはよう」


こんなに不愉快なのだろう。










「それでね、双剣の調子が良かったから、軽く撃破できたんだよ。やっぱり研いでもらうと変わるよねー。あ、でも元の素材が悪いからなぁ、やっぱり鋼にしてもらうともっと効率上がるとか?」

ナマエが笑顔で話している内容は今日の実習についてだ。あれから彼女は自分の言うことを素直に聞いて授業に出ているようだ。しかし気にかかったのは、双剣。双剣の整備を行ったのはカヅサのはずだ。こんなところでも彼が絡んでくる。そう考えてしまえば、ついに顔をしかめてしまっていた。

「クラサメくん?」

ナマエが自分の顔を覗きこんでくる。その視線に対して、自分は自分のそれをもって冷たく切りつけてしまった。

「そんなに強さが嬉しいなら、ルシになればどうだ?」
「………ごめん、意味わかんないよ?」

そう言って彼女は苦笑いした。

強くなりたいのなら、効率を求めるのなら、ルシになればいい。
ルシになれば、双剣なんか必要なくなる。
双剣が必要なくなれば、ナマエはカヅサと一緒にいる必要なんてなくなるんだ。

そんな子供じみた考えから、勝手に口が動く。

「アギトになれないかもしれないが、ルシになれば多くの人を救えるだろう?せっかくルシになれる可能性があるんだ。効率面を考えて、も……」

そこで気付いた。

ナマエは、もう笑っていない。

自分は馬鹿じゃないと思っている。
今の一言に、彼女は傷付いたのだ。
だからすぐ謝罪しなくては、と思った。
ごめん、そう言うだけで良いのに。

「さっさとルシになってしまえば、こんな訓練などしなくてもいい。そうだろう?」

やめろ、と叫んでも自分の体は言うことを聞かない。
黙っていればいいものを、口から出てくるのは、彼女を切りつけることしかできない酷いもので。

「あはははっ、そうだね。うん、クラサメくんの言う通り」

最後の力を振り絞って。そんな表現が似合う笑顔を自分に向けて、ナマエは立ち上がった。

「君の、言う通りだよ」

あの時見た表情は、きっと一生忘れられないだろう。
悲しくて、辛くて、今にも泣き出しそうな、そんな目。
最初にあったとき、彼女は何も考えていないようなこの世界に生きていないような、そんな目をしていた。
それよりも、きっと、もっと酷い目。
それを、よりによって、友人であるはずの自分が、させてしまった。

立ち去った彼女の背中が、自分とは違って小さかったことを、この時初めて理解した。

彼女は、『女の子』だった。

そう、異性だったのだ。








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