ガモフ艦橋でイザーク、ディアッカ、ニコルが意見をぶつかり合わせていた。

「確かに、月艦隊との合流前に足つきに追いつくことはできますが………」

ニコルが真剣な眼差しで戦略パネルを見る。その声には不安げな響きがあった。

「これではこちらが月艦隊の射程に入るまで10分ほどしかありませんよ」
「10分はあるってことだろ」
「臆病者は黙ってるんだな」

もともとそりが合わない組み合わせではあるが、ニコルの『慎重論』に対して相変わらず嘲笑うのがイザークとディアッカだ。

「10分しかないのか。10分はあるのか。それは考え方ってことさ。俺は10分もあるのに、そのままあいつを見送るなんてゴメンだな」
「同感。奇襲の成否はその実働時間で決まるもんじゃない」
「それはわかりますけど……」

言っていることは理解できるが、それでも渋るニコルを無視し、イザークは続けた。

「ヴェサリウスはすぐ戻ってくる。それまでに俺達で沈める」

功績を収めたがるイザークらしい言葉だったが、内心それだけではないということを、ニコルもディアッカも理解している。

(ナマエ、人質にされましたからね……)
(腸煮えくりかえってるんだろうなぁ)

勿論二人も気分は同じだ。仲間を人質にされて良い気分になどなるはずがない。復讐できるものならしたいが、そこですぐ仲間の安全を考えられるのがニコルで、復讐を強行して仲間のストレスを解消しようというのがイザークの考えなのだ。

「いいな?」
「OK」
「……分かりました」

おそらく反論したところでもう何も聞いて貰えないのだろう、とニコルもついに承諾した。

「あ、ナマエにも出撃してもらいますか?新しい機体も来たことですし」

そういえばナマエがここに居ない。その事に気づいたニコルが二人に問いかければその事については賛成してくれた。
彼女のことになると皆素直だ。

「探しに行ってきますね」
「おい、抜け駆けかよ。だったら俺も探しに行かせて貰うぜ」
「貴様等、そんなことが許されると思っているのか!俺が見つけ出すから大人しくここで待っているんだな」

本当に、彼女のことになると皆素直だ。










「あ、ナマエ」

丁度格納庫から出て来たナマエを発見したのはニコルだった。そういえばあれだけ時間があったのに彼女が帰ってきてから一度も顔を見ていないというのが変な話しだ、とニコルは笑った。

「ニコル?」

存在に気づきナマエが振り返る。ニコル本人だと確証すると、顔が爆発的に赤くなった。

「どうしたんですか?」
「え、あ、その…何でもない、わ……」

脳裏に過ぎるのはラクスの言葉。好きな人。それが、今目の前にいる彼なのだと思えば、年ごろの女の子なら話しにくくなったりもするだろう。それにしたってこんな分かりやすい態度ではダメだと、首を振った。

「そ、それより、何か用が有ったんじゃないの?」
「そうです。今から『足つき』を襲撃するので、ナマエも参加して欲しいんです」

ついに来たか、とナマエは目を細めた。覚悟はしていたことだ。それにキラにも言った。私に足つきを撃たせないよう本気で私を殺しに来い、と。だったら私の取るべき道は一つだけだ。

「分かったわ。じゃあ着がえたらすぐ発進する」
「よろしくお願いします」

双方が平和に暮らせる道など、もう無いのかも知れない。









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