私が言うのも何だが、アレだ。獄寺隼人は不真面目なくせに早いときはやたら早く学校に来る。遅刻キャラでもあるが、最近はちゃんと学校へ来るようだ。実際私は奴の後ろを歩いていて、るんるんと言う音が聞こえるぐらい楽しそうに歩いている。

「隼人ー?」
「んだよ」

途端に不機嫌そうな声になった。失礼な奴だ。わざわざこの名字名前様が話しかけてるというのに、だ。エルザでさえちゃんとにこやかに笑うぐらいできる。

「その上機嫌な理由を述べよ。五文字以内で」
「いや、無理だろ!!あえて言うなら・・・『十代目に会「はいそこまでー」

からかってやれば面白いぐらい反応が返ってくる。

教室に荷物を置くと、いつもの定位置(校門を入ってすぐ右の歩道橋もどき)へと向かう。
隼人はいつもここでツナの登下校を見守って(?)いる。しばらくするとぞろぞろと生徒が学校に入っていって、その中にツナを見た時は何故か名前もほっとした。そしてふと横を見ると隼人が今にもダイナマイトを爆発させるとと言わんばかりの勢いで怒り狂っていた。










(ちくしょー野球野郎!!十代目に馴れ馴れしくしやがって!!)

野球野郎こと山本武はたった今綱吉を小突いたところで、綱吉を神と崇め尊敬する隼人からしてみれば許されない愚行である。

「リボーンさん。本当にあいつをファミリーに入れるつもりですか?」
「つもりじゃなく、もう入ってるぞ。俺が決めた」

「ちょっとまて、私はその話を聞いていないぞ」

リボーンの言葉にショックを受けている獄寺を余所に、名前がリボーンに問い詰める。

「だから今聞いた通りだ。山本武をボンゴレファミリーに入れるぞ」

数秒間の硬直時間を使用した後、獄寺は再び武が綱吉を小突いたところをみて『あ!また10代目を!!』と意識を取り戻した。

「考え直してくださいリボーンさん!!俺はあんな無礼な奴を入れるのは反対です!!」
「同じく。無礼な奴うんぬんは知らんが、あの弱そうなのは無理だ。第一、あんな堅気の人間をマフィアにするなんて・・・」

名前が話している途中には、すでにリボーンは鼻で風船を膨らましていた。










以上、名前とリボーンの読心術と心境を持ち合わせた回想シーンである。

「っつーわけで、獄寺を納得させるためにも、山本の『入ファミリー試験』をすることにしたんだ」

ぷかぷかとプールに浮いているリボーンはさも当然のように告げた。

「俺が納得できーん!!」

綱吉が叫んだ先はもちろんリボーンだ。

「何勝手に決めてるんだよ!ってか学校のプールに入んなよ!!名前も普通にリボーンの為にデザート出すなよ!!」

名前はさも当然のようにリボーンの側について(さすがにプールには入らなかったけど)デザートの配給をしていた。この子ボケだったのー!?と多少なりとまともな人を期待していた綱吉はショックを受けた。

「山本はクラスメイトで友達だぞ!それに野球で忙しいんだ!お前たちの変な世界に巻き込むなって!」

名前も何とか言ってやってよ!と促して見るも、複雑そうな顔をしただけで特には何も言わなかった。しばらくやり取りが続いても、何か文句がありそうな名前は口を開かず、獄寺が山本の所へ向かったと言うことを聞き、綱吉は急いで現地に向かう。

「何か言いたそうだな」

ずっと控えていた名前にリボーンは声をかけた。名前は少し思案したあと、頷く。

「いきなり堅気の人間をマフィアにしても、と言うところです」
「その口振りじゃ、山本の心配でもしてんのか?優しーな」

リボーンの口角が上がるが、名前はそれに気づかず顔を真っ赤にして怒鳴りだした。

「そんなんじゃありません!ただあんな奴を入れたところで、ツナを守れるはずがないと」
「でも運動神経はあいつの方がいいぞ、お前らよりな」

それに、とリボーンは続ける。

「堅気の人間って言っても、お前も獄寺も人を殺したことなんてねーだろ?」
「隼人は知りませんが、私は・・・」
「実際その年で人殺したことあるやつなんていねーよ」

一歳にそんな説教を喰らうことになるとは思いもしなかった名前は笑ってしまった。リボーンも再びニッと笑い『さぁ行くぞ』と言ったとたん消える。名前は振り替えって綱吉の方を向くと、遅いながらも懸命に走っている綱吉のベルトにロープを引っ掛け台車に乗っているリボーンが見える。行動早いな、と飽きれ半分尊敬半分でため息をつき、足元に視線を落とすと紙切れが一枚落ちていた。

『助けたいならいつでもいいぞ』

「要するに助けろ、と?」

自分は彼をファミリーに入れるのを嫌がっていると言うのに。リボーンが肯定派なら自分は否定派なのだ。そのところを理解していたら、まず『助けろ』なんて手紙を渡さないだろう。

「私は、優しくなんてないからな・・・」

何となく呟くと、名前はリボーンが散らかしていったプールの片付けを始めた。










「あー、どうしたらいいものか・・・」

二階の渡り廊下の手すりに腰かけて(※危険だから良い子は真似するなよ!お姉さんとの約束だからな!)名前はぼやいていた。

「いや、だってな。あれはもうやりすぎじゃないかと」

目の前にはダイナマイトやら銃やらが無数に飛び交い、学校の風景とは程遠い地獄絵図がある。そしてたった今参戦してきた大人ランボは『サンダーセット』などと言い出す始末。

「・・・めんどくさ」

そう呟いてからの行動は迅速だった。
ひょい、と二階から飛び降り、地面に足をつけたと同時にその脚力を活かして加速する。

携帯用の錐をポケットから出し構えれば準備は整った。

「レディ、ゴ・・・ッ」

さらに加速し、あっと言う間に綱吉と銃弾の間に入る。おそらく彼には視認できていないだろう。腕を一振りして錐を投げロケットランチャーの弾に一つでも当たればあとは勝手に誘発して回避できるはずだ。

(いくらダメツナと呼ばれていても、これぐらい回避でき・・・)

「うわぁぁぁぁっ」

名前が安全確保したにも関わらず、わざわざ爆発音がなる方へ突っ込んでいく。もうどうしようもない馬鹿だ、と諦めてそのまま走り去ろうとした時、武と目が合った。相手はにかっと自分に笑かけ、綱吉の襟首を引っ張る。

(こいつ・・・)

このパニックになりやすい状態で、自分の姿を見切ったと言うのか。いくら野球で動体視力が鍛えられているとは言え、不可能に近いことを。

ただものではない、とこの時そう思った。










「山本がひっぱってくれて助かったー」

ツナのやつが安堵の溜め息をついているとき、俺はさっき確かに見た名字を探していた。しかしそれを中断させられ、獄寺と右腕だの肩甲骨だののやり取りをしていても何となく目を泳がせていると、小僧が『どうした?』と尋ねてきた。

「さっきな、名前来なかったか?」
「(こいつ、見えていたのか・・・)あぁ、そうだぞ」
「えー!?名前来てたの!!」

ツナが驚いて叫ぶと、小僧から『うるさいぞ』の一言と共に顔面に蹴りが入る。あれは痛そうだなー、と心の中で感想を漏らし、小僧を見るとニヤリと笑われた。

「ってことは名前も山本のことを認めてるってことだな」
「否定派俺だけー!?」
「これで晴れてファミリーの一員ってわけだな」
「ちょ、山本も!!」

ぎゃーぎゃーと騒ぎ出すツナと一応ファミリーとして認めてくれた獄寺に名前。それから小僧。

野球しかなかった俺の、大切な友達。

「やっぱ、いいよなー」
「え、何が?」
「んー、こっちの話」

俺の日常の一ページが、最近変わりつつあるんだな、これが。










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