COMMから任務内容が伝えられ、あたしは了解とだけ返事をする。COMMの相手がクラサメだからか、隣にいるナマエは今日の晩ご飯は何だの、トンベリは元気かだの『超』がつくほどの無駄話を繰り広げている。
「ほら、いい加減にしな」
「かんにんしたって。ほな、ちゃっちゃと終わらせますか!」
ナマエは優秀だ。武器を構えたら、もう任務モードになれる。手心など一切加えない。ただの戦闘兵器になったのかと言えば、もちろんそうじゃない。あたしが前で敵を捌いている時、後から飛んでくるナイフは正確に敵を貫き、あたしを避ける。頭はとても冷静。だからあたしとナマエの武器の相性は、まぁ良い方だ。あたしが前衛、ナマエが後衛。それでいて安心して背中を任せられるんだから、これ以上の相棒はなかなかいない。
「ナマエ」
「何や?」
後に向かって声を投げかける。すると、返事と一緒にナイフが私の真横を通り抜けて敵を黙らせた。
「何のつもりでこのクラスに入ってきたのか、あえて詮索しないけど、あたしたちの害にならなければ、歓迎するよ」
振り返ってちゃんと見れば、ナマエはいつものヘラヘラ笑いをしているんだろう。
夕焼けがナマエの後で輝いていて、顔の表情は詳しくは読めない。
「何や、気づいとったんかいな」
「気づくってほど分かっちゃいないけど、想像はつくね」
「勘するどい子は怖いなぁ。でも、」
ちっちっち、とナマエは指を振った。何かむかつく。
「その読みさえも、甘いっちゅーもんや、でっ」
真っ直ぐ、あたしの顔めがけて鈍く光るナイフが放たれる。やはりナマエはコントロールは抜群だ。あたしの額を正確に抜けるだろう。もちろんそうできるだけのスピードもある。文句の着けようがない。
そして、やっぱりこれ以上の相棒はいないんだろうね。
さっと屈めば背中からあたしを切ろうと近づいていた白虎の兵ののど元にそのナイフが食い込み、血が吹き出る。普段はなかなかやらないんだけど、あたしは自分の鎌を大きなモーションで振りかぶると投げた。その先には、勿論ナマエを狙う白虎兵。
「いやぁ、ナイスコントロール!」
不思議なことに先程まで逆光で見えなかったナマエの表情が、分かる。
やっぱりヘラヘラ笑っていた。
「じゃあいこか!」
「0組、任務を開始する」
青春ドラマじゃないけど、夕日を背にあたし達は走り出した。
(サイスー)
(なんだ?)
(おおきに)
(…ばーか)
シリアス…?