風を受けてなびく草の模様が次第に遠ざかっていく。小さな頃はここで彼とよくかくれんぼをしたものだ。あの時は背が低かったので、こんな草原でも隠れられた。
(いまでは無理だろうけどね)
キョロキョロと辺りを見回すと、オレンジ色の頭が見えた。いたいた、と思いながら足音を忍ばせて近付いていく。後ろを振り返られてもすぐには気付かないように、少しかがんでゆっくりと進んでいった。
(せーの、)
一度手を引き、背中に叩き付けようとした。が、
「何してんの、ナマエ」
どーん、と理想通り行かず、後ろに目が着いているのかラスティ・マッケンジーが声を掛けてきた。相変わら勘が鋭い人だ。
「いや、えーと」
悪戯がばれた子供の心境で口ごもってしまう。これじゃあ本当に悪いことをしたみたいだ。その空気を読んだのか、ラスティがわしゃわしゃと頭を撫でてくれた。
「・・・あ、どっちが本命でしょうかゲーム?」
「あー、それそれ」
「で、当てたら僕にくれる、と」
「まぁ、欲しければあげるけど・・・?」
そう言えば、欲しいに決まってるっしょ、とこの草原のように爽やかな笑顔が返ってきた。
「じゃあどーっちだ!?」
でーん、と二種類の包装紙を見せると、ラスティは迷わず右の紙袋を指した。
「こっち!」
そっちを選ぶなら、今日から私は貴方のもの。