静寂に包まれる0組の教室。先程まで騒がしかったというのに(主にナインが)、たった一言で静かになるとは。これからたまに突拍子もないことを言ってみるのも手か、と思っていると、デュースが挙手をした。

「何だ」
「一人増える、というのは、それは、マザーの…?」

ドクターアレシアの関係者ではないはずだ、と言いたいのだろう。自分達にこれ以上知り合いはいないと。マキナとレムは例外とはいえ0組はドクターアレシアの『子供たち』で構成されているのだから、疑問も無理はない。その問いに答えるべく首を横に振った。

「いや、私の親戚だ」

一瞬の静寂と、そのあとの爆発はさらに威力を大きく見せた。

「アァ?てめぇの親戚だぁ?」
「隊長の親戚、ですか」
「やはり隊長も人の子でしたか」
「トレイ〜それは失礼だよ〜」

口々に私が人間であったことを安堵する内容をいう。シンクが珍しく正論を言っていた。私だって人間だ。親戚の一人や二人いたって全然おかしくない。

「まったく…。候補生、ナマエ。入れ」

何か言ったところで驚かれるだけなので扉の方を見る。大きな音をたてて開かれた扉から入ってきたのは、自分と全く似ていない親戚。カツカツとブーツの音を鳴らし、教壇に立った。

息を吸う音が聞こえた。

「はーい、うちナマエっていいますー。みんなよろしゅーしてやー!」

独特のなまり。少なくとも朱雀では聞かない特殊なしゃべり方のはずだ。
それでもそんなこと気にさせないレベルの明るさに、好感を抱いた者のほうが多いだろう。実際シンクやデュース、ケイトなんかは笑顔だ。

「はいはーい!質問!」

ケイトが勢いよく挙手する。発言を許可するとケイトは私を指差した。人を指差してはいけない、ということまで教えなくてはいけないのか。

「ナマエは本当にこの人と親戚なの?似てないけど」
「んー、難しい質問やなぁ」

わざと大袈裟に顎に手を当てて考えている。確かに多少ややこしいところではあるが、事実をそのまま告げたらいいだけのことだろう。

「血は実際繋がってへんねんけど、あれや、いとこのいとこ!」
「え〜それって血繋がってないの〜?」
「いえ、いとこのいとこは血縁関係にはあたりません。例えばA子さんという人が居たとして、隊長とナマエはそのA子さんを共通のいとことしているのです」
「う〜ん、分かんないなぁ〜」

クイーンが適当な紙でさっと家系図を書いて説明する。するとシンクも理解したようだ。ついでにその二つ隣にいるケイトに人に指をさすなということを教えておいてほしい。

「それってコネで入ってきたってことー?」

頭の後ろで手を組んでいたジャックが発言するとナマエは唇を尖らして私を見てきた。そこのところどうなんだ、と訴えかけている。

「そう思われるかも知れないが、事実能力は1組を軽く凌ぐほどだ。軍令部とドクターアレシアで議論し、推薦として0組に入ることに決まった」
「すごいねー」

じゃあ全然良いやー、と何がいいのか分からないが笑顔で手を振るジャックを見て、またナマエに視線を送る。目線だけで『ありがとう』と言われているのは分かった。

「ナマエ、年齢は?」
「それは思った。クラサメと同じぐらいなら候補生として魔導院には入れないだろうけどな」

セブンとサイスだ。人を年寄呼ばわりとは、もう0組に常識を教えるのは無理なのか。溜め息をつくが、生憎二人は気づいた様子がない。

「ふっふーん。それはないしょってことにしとくわ!」

意味がわからない。

「ちなみにクラサメと一緒に住んどるさかい、何かうちに用事あったらクラサメの部屋来るとええよ!」


今日、最も大きい声が響き渡った。










(オイ、いくらなんでもそりゃねぇと思うが、手ぇだすんじゃねぇぞコラァ)
(候補生と指揮隊長、となると示しがつきませんからね。そもそも候補生というのは…)
(もし手を出したらロリコンのレッテルは間違いないね)
(サイスは手厳しいねぇ〜)

(勝手に話を跳躍させるな)
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