Always
地面とキスする羽目になってしまったラスティ・マッケンジーを無視してアスラン・ザラは目の前にいる腐れ縁達をぼんやりと眺めた。
(俺は夢でも見てるんだろうか・・・ナマエに会えると思って帰ってきたら、どうしてこんな連中が・・・)
「ちょ、アスランしかとー?酷いよー」
「あぁ、すまない。ラスティ。とりあえず状況を説明してくれるか?」
誕生日を祝いに来たならともかく、どうして『トリック・オア・トリート』なんて言葉が出てくるのだろう。
「ちなみに言うが、ハロウィンは明日だぞ」
「うん、世間一般的にはそうだね」
「つかアスラン、姫様がお待ちだぜー?」
ディアッカ・エルスマンが飄々とした調子で廊下の奥を指差す。来ていたことには来ていたのか、と安堵の溜息を漏らし、次の瞬間にはこの飢えた野獣どもに何もされていなかったかと心配になった。慌てて中へ入ると、そこにはぐっすりと眠ったナマエが居る。
「・・・・・・・・・・・・・はぁ」
がっくりと床に手を突き、苦笑いを浮かべながらナマエを見つめる。
ラスティ達が居ることも忘れて二人の空間を作っていると、イザーク・ジュールの嫌味ったらしい台詞が聞こえてきた。
「あと五分早ければ、起きていたんだがな」
空気の読めない奴が、と悪態をつかれたが、何も言い返せずにただ『そうか・・・』と返した。
「(やー、イザークって大人げないねぇ)」
「(何を今更。昔からでしょ)」
「・・・で、目的は?」
ハロウィンでもない。
誕生日も過ぎている。
そんな10月30日に何の用だろうか?
「・・・・・・昨日はアスランの誕生日だったよね?」
ラスティが確認するように聞いてきた。
「そうだが」
「じゃあ一日過ぎてるよなぁ。ちなみに昨日から誕生日に関して何か言われた?」
要するに『おめでとう』の類を言われたのか、とディアッカは聞きたいのだろう。
「いや、何も」
「・・・・・・・・・・・・ここまで言ってまだ分からないんですか?」
ニコル・アマルフィが顔を覗き込んでくる。
「だからなにが・・・」
「ナマエが誕生日の時、貴様は一番に言いたくないのか!!」
そこまで言われてやっと分かった。
というより、もう答えだ。
「だから、か」
鈍すぎだ、と周りから非難の目を向けられる。
「ハイネにも言われただろ、乙女心を理解しろって」
「ど、どうしてそれを・・・っ」
「俺、一応同じ会社なんだけど・・・」
少し肩を落としながらディアッカはぼやく。
「あ、すまない・・・」
「どうせ忘れられてたもんなー」
「だからすまない、と・・・」
そのままどかっと床に座り、酒を飲み始める。成人にはなったが、まだ性格は子供っぽいところもあるので、見た目幼いがこのメンバーの中では大人っぽいニコルがはらはらしながら見ている。
「・・・ん?」
服の裾に違和感があって見てみると、ナマエがしっかりと掴んでいた。やれやれ・・・と微笑みながらナマエを抱きかかえると『あー、バカップルって見たくない』とラスティの愚痴が聞こえてきた。
「ナマエ」
「んー・・・・・・」
寝ぼけ半分なのか、微妙な返事が返ってくる。それにくすくすと笑うと頬をそっと撫でる。すべすべしていて気持ちよかった。
「早くお前から、聞きたいんだが・・・まだお預けか?」
「・・・・・・・・・・むー・・・」
「そうか。じゃあ明日まで待つよ」
「む」
本当に会話をしているようで、何となく聞いている自分が恥ずかしいのか、イザークは我先にと退出する。
「じゃあ僕らも退散しますか」
「そうですね」
「じゃあなーアスラン。襲うなよー」
誰が襲うか!!と叫ぼうとしたがその前に三人は風のように去ってしまった。
「全く・・・」
「あーすら・・・ん・・・」
寝ぼけたナマエに名前を呼ばれ、アスランはそっと頬に口付けた。