Always



朝日がこれでもかと言うぐらいに降り注いでいるが、カーテンというものの前では何の役にも立たない。しかし太陽は必ず昇ってきて、時間に正確な彼をたたき起こした。

「・・・・・・・・・・」

寝起きはそこそこ良いはずではあるが、目を開けてその直後にカーテンの隙間から漏れる光が視界を覆い尽くせば、寝返りぐらいはうちたくなる。ごろんと横を向き、しばらくしてからやっと目を開けた。翡翠の瞳はまだ眠そうではあるが、もういい加減に起きないと後がめんどくさい。

「っと・・・」

勢いを付けて起き上がると、もう眠くならなかった。完全に覚醒したようだ。ベッドから抜けだし服を着替えてから顔を洗って朝ご飯を用意する。一人暮らしではあるが付き合っている女性は居るので食事などには困らない。いつも夜には家に勝手に上がっていて料理を作っていってくれるのだ。少し前までは料理のバリエーションが少なく週に一度はカレーだとかそんな調子だったが、最近は料理教室などにも通っているようで毎日違うものが食べられる。

そしてふと横を見てみると、携帯電話が光っていた。きっと彼女だろう。


『おはよー。
どうせアスランのことだから、私が作ったのだけしか食べてないんでしょ?
それは嬉しいけどさ、ちゃんと他のものも食べてよ。
冷蔵庫に野菜ジュース入ってるから、それ絶対朝に飲んでね!!
朝ご飯の一品だから!!
分かった?

PS:今日は早く帰ってきてね』


身体を気遣ってくれるメールが入っていて、アスラン・ザラは頬を緩めた。
どこか変な文章ではあるが(特にPSの内容が)、ほっと安心できる文でもあり、そんな彼女と一緒にいることが何より落ち着くのだ。


『ありがとう。
最近は焦げたものが出なくなったな』


少し冗談めかしてメールを打ってみれば、彼女から『うるさいなぁ、文句あるなら食べなくてもいいんだよー』と拗ねた様子だったので、慰めのメールを打つ。しばらくメールのやり取りをしていたが、そろそろ会社の方へ行かなくてはならなくなったので、お詫びのメールを入れて携帯から目を離した。

(そういえば・・・)

何となくご飯のメニューを見て思い出す。

(誕生日、今日だったな)

道理で朝ご飯から豪華な訳だ、とアスランは一人微笑んだ。










「よっ!彼女からプレゼントは貰えたか!?」
「ハイネ・・・」

同じ所に所属しているハイネ・ヴェステンフルスに朝っぱらから声を掛けられて、アスランは苦笑いをした。
彼のことは苦手ではないが、押しの強い相手なので得意な部類の人間ではない。

「まだだ」
「んー、会ってないのか?」
「今日は朝から会議だろう。だから早く来ないといけなかったんだ」

誰の所為だと・・・とハイネを恨めしげに見る。
そもそもこの会議はハイネは提案しだしたことで、いくら発言権が有るからと言っても出過ぎたまねは慎むべきだろう。

「なーんにも言って貰ってないの?」
「だから何度も・・・」

「じゃあ言うわけにはいかねーか」

隣でハイネがポツリと呟く。何のことだと問いかけてみたが、適当にはぐらかされた。

「お前、本当に分からないわけ?」
「だから何のことだと聞いて・・・」

「それでも彼女持ちかぁ?理解しろ、乙女心ってやつを」

確かに彼の方が女性と付き合っている回数も多いし、言われている内容は分かるが、そのいい方は腹が立つ。

「・・・善処する」
「でないと、俺が譲った意味が無いからな」

そう言えばナマエをハイネと取り合った期間があったな、と思い出す。

「俺の本気を砕いたんだからな、お前は。だから幸せにしなかったら、絞めるぞ。マジで」

それは勘弁して欲しい、とアスランは苦笑しながら会社に入った。










ぐーっと背伸びをして時間を見ると、すでに日付を過ぎていた。アスランは『しまった・・・』と呟くと急いでその場を片付け始める。今日はナマエに早く帰ってこいと言われていたのに、忘れていたことがバレたら絞められるかもしれない。それだけは勘弁してほしかったので、仕事の道具を全て鞄に突っ込み、最後だったので会社の扉に鍵をかける。

(怒るだろうな・・・)

十分前までは自分の誕生日だったのだから、きっと彼女は祝おうとしてくれていたはずだ。エレカを飛ばして家に戻ると、予想通り部屋に電気がついている。

「た、ただいま・・・」

恐る恐る扉を開けるとオレンジ色の何かが飛び付いてきた。嫌な予感がしたのでアスランはとりあえず避ける。


「「「トリック オア トリート!!」」」「・・・・・・・・・」


「はぁ?」

そこにいたのは愛しい彼女ではなく、『さっさとお菓子を寄越せ』と言う服音声と仏頂面の、計四人の野郎だった。









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