もともと、私は目が悪かった。視力検査?なにそれおいしいの?っていうぐらい、あのCみたいなやつが見えない。
だから、学校の座席は一番前。
いつもそこにいるから、席替えの時自分が動く楽しみはないけど、隣に誰が来るのかなー、と別の楽しみ方を見いだしている。
そしてつい最近、席替えをした。
隣の子は、体が弱くて休みがちな子で、居ないことの方が多い。正直さみしい。
でも、数学の授業中だけその空いてる隣に座りに来る子がいる。いや、強制なんだけど。
「おい、ディアッカ」
「ぅえっ!!はい!」
また寝やがって、と数学教師は溜め息をつく。まぁ毎度毎度寝られちゃため息もつきたくなるよね。そして数学教師はコンコン、と指先で私の隣の机を叩いた。
「ほら、お前の特等席だ」
「またかよ…っていうかそれ、ラスティのだろ」
「いいからさっさと来い!ここにずっと固定でもいいんだぞ?」
ディアッカくんはガシガシ頭をかきながら筆記用具やらを持って前の席に、私の隣に来た。ドカッと席に座ると、ディアッカくんがちらりとこちらを見た。ワタシも見てたから、目があった。
「あ、い、いらっしゃい」
「おう、今日もよろしくー」
手をヒラヒラふって応えてくれた。そして黒板に向かい合う。不思議なのは、ディアッカくんは前の席に来たら寝ないのだ。先生の目論み通りなんだろう。
数学の授業があればディアッカくんは必ず移動してくるので、ここ最近は始めからその席に来るようになった。世界史の授業が終わって今は休み時間。その次は数学。だから、今彼は隣にいる。もう準備をするとか、ある意味真面目なんだろう。
「ディアッカくんも大変だね」
「まぁ別にいいんだけどよ」
いい、とはどういう事だろう。最初は前に来るのを嫌がっていたのに。慣れって怖い。
「ナマエってさ、」
「?」
「あー、やっぱいいや」
何か言いたそうだったので追求しようと口を開けたときだった。
「ナマエー」
フレイが小走りで近づいてくる。どうしたのー?と聞けば、先生が使うためのパイプ椅子を引き寄せて目の前に座ってきた。なれている、綺麗な導線だ。
「私、とっても良い情報を手に入れたわ!」
「良い情報?」
「あんたのこと狙ってるやつがいるんですって」
得意の恋話にキラキラと目を輝かせているフレイ。情報網がすごいから信用度は高いけど。
「へー」
「聞いて良い?」
「何が?」
「好きなタイプ」
「えー」
難しいことを聞くなぁ、と頭を悩ませる。好きなタイプ……
「私より背が高くてー、」
「うん」
「元気でー、」
「なるほど」
「面白い人、かなー」
「それって」
「?」
ナマエの隣に座ってる人みたいな?
隣の机を見る。
「アスランくん?面白くはないよー」
「失礼よね、それ。反対反対」
「えっと、ラスティくんか。まずラスティくん喋ったことないし」
あんたわざと避けてる?とフレイが溜め息をついた。
「今、あんたの左隣に座ってるこいつ!」
指差した先にいたのは、
「あぁ、確かに。一致してるね」
ディアッカくん。
背が高くて、元気で、面白い人。
「でね、あんたのこと狙ってる人なんだけど、」
最近あんたの隣が空いてるからって、厳しい教師の教科を狙って、寝てるふりして移動させられてくる、猛者よ。
すると隣から思いっきりガタンと椅子を倒す音が聞こえ、振り替えると、
「フレイ!!そりゃねーだろ!!」
顔を真っ赤にしたディアッカくんが、おられまして。
君の、となり。
分かったことは、実は私も彼がとなりに来てくれていて嬉しかった、ってことで。
(あんたらが両想いなのは見てて分かってたわよ、にぶちん)