\Clap/今日は職員会議のため学校全体で部活が休みだが、一瞬だけ部室に行くから待っててと友達に言われ、教室で待機していたそんな時だった。同じクラスの高尾和成がどかっと目の前の席の椅子の背もたれに腕をかけて話しかけてきた。パッと顔を上げると、ニコニコしながらこっちを見てくる彼。その人懐っこそうな笑顔に、毎日のことだが今日もドキッと心臓を高鳴らせる。
「なーなー」
「何?」
「今、暇?」
「うん」
「じゃあ、しりとりしよーぜ!りす!」
「えっ!?す、するめ!」
「メス」
「すいか」
「カラス」
「スマホ」
「ホトトギス」
そこでふと、高尾が後ろに『す』がつく単語ばかりを回してくるのに気づいた。
「……ねぇ。す、ばっかりやめてよ」
まだ単語のストックはあるがこのままだとやばいと高尾に提案してみる。するとニコニコした笑顔が、ニヤニヤに変わる。これは面白いことを見つけたという顔だ。
「………俺に何か言う事ねーの?」
「だから言ったじゃん。す、ばっかり止めてって」
「ふーん」
「あ、スイス!」
ふと思い付いた単語は相手がさんざん回してきた『す』で終わるもので、してやったりと高尾を見る。すると高尾はさらにニヤリと笑い、椅子をガガガガ、と音を立てて引いてさらに私の近くに座る。近くに。本当に近い。高尾の顔が目の前にあって、距離は10センチぐらいしかないと思わせるほど。
ホークアイが至近距離から私を見つめる。
「すき」
顔が爆発的に熱くなる。きっとからかわれてるんだって思いたくても、高尾の目がそれを許してくれない。
「きゅ、急になんなの」
「ノリで言ってんじゃねーし。本気の本気。マジ」
「冗談じゃない?」
「嫌?俺から告白されんの」
嫌な訳がない。毎日高尾を目で追って、友達からは本気で好きなんだねーなんてからかわれながらも応援されて。
「返事、どっち?yes?no?」
顔が熱い。必死に口許を腕で隠してるけど、高尾にはバレバレなんだろう。
「no……なんて、言うわけないじゃん」
必死の強がりも虚しく、ガッと腕を捕まれて顔を覗きこまれる。いとも簡単に腕をどけられて、嫌でも男女の差を意識させられれば、余計に緊張してしまった。見つめればもうこれでもかってほど嬉しそうで楽しそうな高尾の顔。
「はい、『ん』がついたから俺の勝ちね」
「は?」
「罰ゲーム。俺からのちゅー」
首の下から腕を通して手をそっと後頭部に添えられると、引き寄せる力がかかり、私の頭は自然と前へ。高尾の顔がごく自然に近づいてきて、閉じる前に見えた視線は強烈な色気を帯びていた。
(ほんとはお前に言わせよーと思ってたんだけどな)
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