秋のトレンド大特集、テレビでモデルであろう女達がこの秋流行りの服を着てステージを歩いていた。ミニスカートやらショートパンツやらロングブーツやら、番外個体くらいの年頃が好きそうなものばかり。きっとこれを見て買うという行動を予期しているのだろう。同年代の同性が着ていて可愛い服ならば誰もが欲しいに決まっている。(もちろん趣味云々が前提にあるが)

しかし番外個体はそれを冷めた目で観ていた。服で着飾ってなんと馬鹿なんだろうとか、そういう類の話ではなくて、単に着ている人間が番外個体から見たら大して可愛くないのだ。化粧で塗り固められた顔に番外個体は興味が無い。彼女の中で化粧というのは"自分に自信が無い人が行う偽造行為"という位置に置かれていた。それは番外個体自身が化粧がいらない程に整っていたことも要因だが、化粧をしてまで他人に好かれたいと思わないという思考が番外個体を支配していたことが理由である。

「こんな道歩いてて何が楽しいんだかねぇ……」

そう呟いてから番外個体は引き出しからお財布を取り出すと、テレビを消して外に出た。






「よぉ一方通行、奇遇だね」

「目的分かってる奴に会うことは奇遇とは言わねェよ」

病院にて、一方通行が座っている椅子の隣にちょこんと番外個体も座る。適度に入れられた暖房が心地良い。家だったら確実に昼寝モードになってしまうだろう。

「………見かけねェな、その服」

「ミサカが自分で買いに行ったからね」

「黄泉川の財布から盗ンだのかよ」

「違うに決まってんじゃん。ミサカも一応黄泉川からお小遣い貰ってるから」

「黄泉川がねェ………」

女の子には色々と必要なものがある。それを黄泉川は番外個体と打ち止めに教え、毎月定額お小遣いをあげている。当然番外個体の方が多く貰う訳だが、服を買ってしまったからかお財布は軽い。今まで使わずに貯めてきた時間と気力を失ってしまった気分だ。

(まぁあのテレビの女達より似合ってるし)

謙遜やら謙虚という言葉に、番外個体は無縁だった。



検診も終わり、必然的に一方通行と帰りを共にする。しかし番外個体の検診は予想より長く掛かり、一方通行を20分程待たせることになった。本来一方通行は自分の計画で動く人間である。そんな一方通行が"誰かを待つ"なんて、そんな心境の変化が一方通行の中にあった。

「そろそろ寒くなってきたな」

比較的遅い時刻になってしまった為、太陽はほとんど出ていない。月がもたらす闇が学園都市を覆っていた。それと同時に強めの風が吹いており、それが二人の体温を急速に奪っていった。

一方通行は気候の変化が苦手である。その為寒いのも駄目暑いのも駄目なので、それを見越してなのか白いダウンを持ってきていた。さすがにダウンは熱いのでは?と思うが本人は気にならないらしい。

しかし番外個体は違う。秋物は寒い気候には向かず、風が衣服の中を通り抜けていく。テレビの中の彼女らは撮影を中でやっているので、大袈裟に言えば半袖だって着れるのだ。

(温暖化のくせに寒いじゃん。何が地球温暖化だよムカつく)

しかしいくら悪態をつこうと寒いのは変わらない。能力を使って温められないかと考えるが、体内電流を操り体温を上げるなど聞いたこともなかった。


「………チッ、ンな格好するからだろ馬鹿が」

途端に感じる温かみ、それがもふもふとしたダウンだと分かったのは、少し後だった。誰かが今まで着ていた温もりが番外個体を包み込む。フードの部分のファーが首元に当たり、少しくすぐったい。

「………むずむずするんだけど」

「暖かいなら我慢しろその位」

ツンと言い放つが一方通行は薄着だ。普通ならきっと寒いとか言う筈なのに、番外個体を気遣って何も言わない。そのことに番外個体は何故か体がじんと熱くなった。正確には心臓、つまりは心と呼ばれるものが。

「余計なお世話だから。………でも着てあげる、一方通行がそう言うなら」

なんだかんだでやはり寒いものは寒い。ぶるっと身震いしてからダウンの前を合わせるように羽織る。さっきまで突き刺すように気になっていたファーの部分が、今は何故だか心地好くなっていった。


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