悔やんでも悔やんでも、悔やみきれないことが、この世には山ほどある。それは大抵過去に関することで、自分が犯した失態だったり行動だったり。とにかく悔やむという行為を人間が忘れることなんてない。悔やまないように行動をするなんて、所詮夢のような話である。自分がしてきた行動を全て受け止め受け入れるなんて、徳がある昔の人が言うが出来ることでもなく。というかそういうアンタ達は完全で完璧で完成だったのかよと思わず聞きたくなる。これだから昔の人間の善説なんか嫌いなんだ。

戻りたい、戻りたいあの頃に。いやあの頃では正確さに欠ける、正しくはあの時だ。8月21日、美琴にとっても妹達にとっても当麻にとっても………一方通行にとっても記憶に刻まれた日。あの日、美琴は一方通行に対峙するために一人で実験場に行こうとした。第二位と第三位の間にさえ大きな隔たりがある今、美琴が一方通行に対して喧嘩を売るなど無謀中の無謀。だとしても美琴は一方通行に一言でも伝えなければならなかった。

今思えば、そう思い込んだのが間違いだったのだ。妹達を次々と殺していった一方通行は悪であり、裁きたいなどという思い込み。あの時の美琴は分からなかった、一方通行が本来はどういう人なのか、彼がどういう境遇にいて苦しんできたのか。あの時美琴に理解出来ていたなら、今のようなことにはならなかったのに。

つまりは、美琴は恋をしてしまった。この世で最も憎むべき男に、心を奪われたのだ。街で白が視界を横切るだけで、美琴の全てがそれに反応してしまう。美琴はそれだけ彼を想ってしまった。

でも、でも彼の周りには美琴の居場所はない。彼の隣には打ち止めがおり、彼の前には当麻がいる。そして彼を支えるように芳川や黄泉川、番外個体がいる。彼はあの日に当麻に出会ってしまい、31日に打ち止めに出会ってしまった。もし当麻があの実験を止めなければ一方通行は未だ妹達を殺していただろう。それでも、今彼の周りにいる人達とは出会わなかった筈なのだ。

美琴はしまったと感じていた。後悔しても遅すぎる。美琴の感情的な一時的すぎる行動のせいで、美琴は彼に対する恋を失ってしまった。妹達を助けたいなんて考えてしまったから、そう美琴は思う。そうすれば当麻があの日実験場に行くこともなく、実験が終わることもなく、打ち止めと出会うこともなく、―――今いる暖かい場所にいることも無かったのに。

でもいまさらなのだ全て。美琴が嘆いても世界の時は戻らない。ただ刻々と時が進むだけ。

(なら、今から変えていけばいいじゃない)

未来を変えていく、美琴が隣にいて彼は美琴の手を握ってくれて、そんな彼を見上げたら顔を赤らめていて。そして美琴も優しく微笑んで彼の手を握り返すのだ。

美琴はそんな幸せな未来を夢見ながら、右手に携えた電撃の槍を迷わず目の前にいる少女へ刺し焦がした。


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