「知りたかった答えはあった?」
乱灰によって語られたレベル5の話。末端である黒子達には一生聞かされないであろう話。それを今日聞いた黒子は、戸惑いに満ち溢れていた。
「その後は大変だったよ。まさか学園都市レベル5が地位を捨てて一般生徒に堕ちたんだから。おかげでこっちは後処理が大変だった。そして新しいレベル5の誕生だ」
戸惑う黒子にゆっくりと乱灰が近づいていく。黒子は動転のあまり乱灰の存在に気がつかない。鉄芯へと伸びていた手も、力が入っておらずだらりと垂れていた。
乱灰は袖からナイフを音を出さずに出した。気配にすら気づけない放心状態の黒子がそれに気づく筈もなく、乱灰は黒子の横腹目掛けてそれを刺した。
赤く広がっていく血、それが白地の服を染めていく。どんどん広がっていく赤は、本人の傷が深いことを意味していた。薄れていく意識、迫っていく地面、それらが自身に倒れていくということを伝えてくれる。しかしその情報を正確に処理出来ない体は、受け身も取れずに地に臥せた。
「大丈夫ですか、とミサカはあなたの安否を気遣います」
「………お姉様?」
「残念ながら貴女の求めている御坂美琴ではないです、とミサカは正しいことを述べようとしま―――、大丈夫ですか?」
自身の前で急に泣き出した黒子に対してミサカ妹は何をしていいか分からずに、とりあえず頭を撫でてみた。するともっと黒子は泣き出してしまう。ミサカ妹はそれにオロオロしつつ、地に臥せている乱灰に目を向けた。
「泣いているところ失礼しますが、彼女とはどういう関係で?とミサカは気になることを尋ねます」
「………その人死んでますの?」
「急所は一応外しました、とミサカは貴女の問いに答えます」
「その人は今騒がれている常盤台襲撃事件の共謀者ですわ」
間違ったことは言っていない。事件が旧レベル5への宣戦布告と取れるならば、彼女だって立派な犯人かつ関係者である。
「貴女が刺されそうになっていたので咄嗟に撃ってしまいました、とミサカは適切な判断が出来たか微妙ということを示唆します」
「いえ、貴女が来ていなかったら私が死んでましたわ。本当にありがとうございました」
頭を下げる黒子にミサカ妹は優しく微笑んだ。辺りには硝煙の臭いが漂い、銃口からは未だに煙が出ていた。