「さてさて、この話ももう15話目、みんなそろそろ飽きちゃった頃かなぁ?でもでもまだまだ戦いは始まってない。最初の一戦すらだよ?あぁ、でも宵見さんと一方通行との戦いはノーカウントで☆にしてもみんな甘いんだよねぇ。乱灰は簡単に捕まるし宵見さんは怖じけついちゃうし。編月に関しては私アイツ大嫌いだし。語る価値も無いっていうか……存在価値すら無いかも。編月死ねこの野郎とか言えちゃう。あっいけない、余計なこと言っちゃたね。とにかく、戦争の火蓋は切って落とされた!どちらかが滅びるまで消えない消えない消えないよ!!」
「篠塚、オマエ恥ずかしくないのか?人形相手に話し掛けて」
篠塚と呼ばれた女は人形を大切そうに机に置いて、くるりと向き直った。
「でもでも姉様、私は退屈なんですよ?だって私呼ばれないんですもん」
「篠塚の出番はまだなんだろう。少しは待つことを覚えろ」
「えぇ〜つまんない」
子供らしく顔を膨らませて篠塚釘夜はぷりぷりと怒る。しかし子供が駄々をこねるようなもので、そこには本気というものを感じさせなかった。
「篠塚、オマエ今いくつだよ」
「この篠塚釘夜、永久の日々を生きる孤高の戦士。我が名を知るものは………」
両手を大きく広げて急に演説を始めた釘夜。彼女の中で今回は自身が孤高の戦士であるらしく、まるで中二病かと思わせる言葉をつらつらと述べはじめた。
「篠塚五月蝿い。少しは黙るということを覚えたらどうだ」
「姉様こそ、乱射時の口の悪さといったら私を上回るのに」
くすりと笑う釘夜に対して冷笑を浮かべる。最早相手にすらしないという表れだ。しかし釘夜はそれに全く動じず、再び生い立ちについて話し始めた。
「………篠塚様、三日月様」
名を呼ばれた二人が振り返る。すると入口にいたメイドが恭しく頭を下げてドアを開けた。
「篠塚良かったな。………仕事だ」
「やったぁ。お仕事お仕事!」
人形を抱きしめたまま篠塚は揚々と扉をくぐった。まるでこれから宴でも開かれるかのように。
「ちょっといいですの?」
背後から声を掛けられる。見知った声である為に、彼女は振り向きもせずに反応した。
「あっ白井さん。こんにちは〜風紀委員の仕事ですか?」
「わざとらしい演技は止めて下さいます?私敵と馴れ合う趣味はありませんの」
「…………、何言っても無駄みたいだ」
黒子の手を取り路地裏に入る。そして乱灰は佐天の擬態を解き元の姿に戻った。
「一応聞こうか。どうして私だと分かった?」
「あなたの前に初春が歩いていたの、知ってまして?」
「初春?………あぁあの風紀委員の片割れか。居たような気もするが気にしなかったな」
「それが見分けるポイントでしたのよ。まぁ何がとは言いませんけど」
太股に仕込ませてある針の準備は出来ている。彼女が逃走する前に仕留められるか、それが黒子にとって大切だ。しかし黒子は同時に、彼女に聞きたいことがあった。
「………ずっと疑問だったことがありますの」
「疑問?」
「どうしてお姉様達―――旧レベル5達は地位を捨てましたの?」
「そんなの御坂美琴に聞けばいいだろう」
「お姉様は答えてくれませんでしたわ。だからこそ、あなたからなら聞けるかと思って」
「………いいよ。これは私の気まぐれだから」
敵である乱灰が意外にも了承したことに、黒子は純粋に驚いた。最悪力ずくで聞こうと考えていたのだ。壁に寄り掛かると、乱灰は静かに過去について語り始めた。