スーパーからの帰り道、ことはと秋名は帰路を共にしていた。アオならば夜道は危険だがことは相手にその必要はない。むしろ襲った相手を気遣いたいくらいだ。それなのに何故共にしているかと言うと、要は荷物持ちだった。秋名も細いとはいえ男、ことはも強いとはいえ女なのだから。


「秋名、これも持って」

「買いすぎじゃないか?日持ちもあまりしないし」

ぶつぶつと文句を秋名は言うが、なんだかんだで持ってくれる。そんなところに秋名の優しさを感じるのだが、当のことはは近すぎて気づかなかった。



「ねぇ秋名、アンタ好きな人いるの?」

いきなりのことはからの質問に、秋名は荷物を落としそうになったが寸でのところで回避した。ことはは特に気にもせずに秋名の前を歩く。

「どうしたんだよいきなり」

「秋名の周りって女の子多いじゃん。だから秋名にも好きな人いるのかなって」

「興味本位でそんなこと聞くなよ」

「別にいいじゃない」

いないの?と首を傾げることはを知らないと一蹴し、秋名はことはの前を歩いた。その態度にカチンときたことはは薄気味悪い笑いを浮かべて秋名に体当たりをする。

当然のごとく不意打ちをくらった秋名はその場に倒れ込み、荷物は四方へ散って行った。荷物を拾おうとする秋名を邪魔するかの様に前に立つことは。アングル的に下着が丸見えだったが何も言わないでおくことにした。

「人が質問してるんだから答えなさいよ!」

「好きな人についてなんて答えたくない。第一好きな人なんていないし」

「じゃあヒメやアオや桃華や………私はどうなのよ」

「そりゃ好きだよ」

「今アンタ好きな人いないって言った」

「そういう好きじゃなくて、こう、友好的な好きだよ」

「じゃあじゅりさんや八重さんも?」

「もちろん」

秋名の断言した言葉がことはに少し突き刺さる。秋名は無自覚だろうが(特定の数名が)言われて傷つく言葉を言ってしまった。桃華ならば秋名を見守るだけでいいとか言いそうだが、相手はことはである。人一倍負けず嫌いな彼女はそういう言葉に過剰に反応する。

「んの………」

「?」

「馬鹿秋名ぁぁぁ!!」

夕暮れの通りにことはと秋名の声が反響していった。そして同時にことはの回し蹴りが秋名の頭を狙う。普段から戦いを好む秋名ではないので、なんとかことはの蹴りを回避した。(あと一瞬遅れていたら秋名はしばらく再起不能に陥るだろう)

「危ないじゃないか。少しは気をつけろよ」

「生憎秋名相手に手加減なんて文字ないのよ」

「……そうかよ。っていうかもう少し考えた方がいいんじゃないか?」

「何が?威力の改良かしら?」

「そうじゃなくてさ、その………、不可抗力だけど見えるし」

「へっ?」

秋名の言葉がことはの中で反芻される。見える?何が。回し蹴りで見えるものなんて足とした………

「〜〜っ!!!秋名の馬鹿!!!」

「ことは!?」

秋名の目を見れなかった。確かにことはのスカートは短い。高校生はこんなものだが、ことはは身長が割と高めなのでその分短く見える。別に下着は見られても構わない主義だった筈なのだが。

(なんで秋名に言われるとドキドキすんのよ!!)

別名恋と呼ばれる感情に、ことはは悩まされるのであった。
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