「………そうよね、分かってたわ最初から」

美琴は妹達の一件から学園都市の裏を垣間見てきた。そんな彼女は自然と目を逸らしてきたのかもしれない。――平和は当たり前にあるもので失われることはないと。

美琴はコインの数を数えた。通常の戦闘では十分な数がポケットには入っている。

「出来れば平和的解決にしたいわ」

「そりゃ無理かもな」

「でも私ってレベル5で唯一の平和要員じゃない。そんな私の戦闘で殺人なんてレベル5も終わりね」

「それくらい軽口叩ければ十分だ」

「じゃあまずはこの女から聞き出すか。女相手だけど容赦はしねぇぞ、俺は」

「いやアンタにやらせたらダメだと思う。それに能力無くても此処にはアレがあるしね」

((アレ?))

美琴は棚から袋に入った少し大きめの物を取り出した。見たところ何かしらの機械のようだ。

「これね、佐天さんが買ってきた優れものでさぁ、効果覿面なんだよね」

その機械を袋から取り出し彼女の体に巻き付ける。何か卑猥な道具みたいだが佐天が買ってきた物だ、中学生がそんな物を持ち込み置いて帰るなんてないだろう。

「んじゃ……スイッチオン☆」

美琴の手元のスイッチが押された瞬間、少女の体が震えはじめた。

「ひゃあっ!!あははっ、ちょっ、まっ……しぬ、むり、やめ…ひっ!」

何やら厭らしい声を上げ彼女は床をのたうち回った。何かのプレイと思わせる光景に二人は正直引いた。

「佐天さんが通販で買った対初春さん用くすぐりマシーンよ。さぁ止めてもらいたいなら吐きなさい」

「なっ、そんなのムリって…あぁ!ちょ、そこはダメってひゃああぁん」

「おい第三位、止めろ。光景が何か……キツイ」

「何よ、平和的じゃない」

「多分アンタ平和っていう意味間違えてるわ」

そう?と首を傾げながら美琴はスイッチを切った。まるで呪縛から解き放たれたかのように少女は倒れこんだ。息は上がっており目も涙目になっている。

「はっはっ……、この鬼畜女め」

「ほら、言わないならスイッチオ「言います言いますからお願いします止めて下さい」

結局少女は折れた。




「まず名前から教えなさい」

少女を椅子に座らせその正面に美琴、少女を挟むように垣根と麦野が座った。少女の体には佐天のくすぐりマシーンが依然として巻いてあり、美琴の一存で凶器と化す。少女は体を震わせながら手を膝の上に置き、行儀良く座っていた。

「………」

「そう、ならスイッチ「ら、乱灰恭莉だ」

「能力は?」

「……身体変化(ボディチェンジャー)」

「成る程、だから佐天さんに化けてた訳だ」

「身体変化だなんて使い方次第では面白いじゃない。そうね……浜面に化けて全裸で走り回って来い」

「そんな羞恥プレイ出来るか!!このクソババ「今すぐ原子崩しで粉々にしてやるよクソガキがぁぁぁ!!!」

いまにもぶっ放しそうな麦野を宥めて美琴は話を戻した。しかしレベル5を襲った奴らに関して彼女は何も話さなかった。くすぐりマシーンを発動させても変わらない。

「口固いわね」

「違う、言えないようにされているんだ。来る前に薬を打たれた」

「薬って……」

「学園都市も学園都市だな、そこまでやるか普通。よっぽど俺達に渡したくない情報な訳だ」

「話したら確か心臓止まる」

いきなりの深刻な物言いに三人は黙ってしまった。学園都市は科学に精通している街だ。そんな街では口封じの為の薬など簡単に調合出来るのだろう。

「ま、嘘だけど」

「よし、今からミンチにするからブルーシートひいておけ」

「何言ってんだ、原子レベルまで崩壊させてやるよ」

「体内電流弄れるかしら」

「ちょ、怖い怖い止めて下さい。心臓が止まるのが嘘で、言えないのはホント」

彼女から話を聞くのは前途多難なようだ。

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