今回の常盤台闇討ち事件。単なる愉快犯か生徒及び学校に恨みをもつ人物の犯行だと思われた。しかし実際はもっと深く柵の多い事件だった。
黒子は一瞬迷ってしまった。常盤台中学が狙われたことは許せない。風紀委員としてではなく白井黒子としても。だからこの事件を早く終わらせたかった。
だがもしこの事件に意味があったら?無差別に繰り返す馬鹿げた犯行ではなく何らかの意図のある行動ならば?
例えば……学園都市全体が動く程の"実験"。黒子は美琴から妹達の件を聞いていた。あの実験は第一位である一方通行をレベル6にするものだ。その為にクローンとはいえ一万人以上一方通行は殺した。
あそこでは確かに法は捩曲げられたのだ。"人を殺してはいけない"という法律が公的に無効になった。一方通行は本来裁かれるべき人間なのに法は彼を裁けなかった。
あれと同じことが起きている。犯人は学園都市から守られながら今も犯行の計画を立てているのだ。それに気づいているのに何も出来ない。そもそも何かしていいのかも分からない。
学園都市の決めた犯罪は犯罪ではないのだから。
「なんて馬鹿なこと思うわけありませんわ。」
「白井さん?」
「上が動いていようが私には関係ない。常盤台中学を……お姉様の想う気持ちを踏みにじった代償は払って頂かなくては。」
「準備出来てます。」
「佐天さんとお二方、お姉様をお願い致しますわ。」
「どうする気だよ!!」
「上とやらに一泡付かせに。」
「お前らが思ってるほど学園都市は明るくない。一泡吹かせようなんて甘い考えだ。」
「貴方に何が分かりますの?」
「少なくとも私達はあなたたちより深い場所にいる。はまづらはそれをよく分かってるから。」
「……貴方達も裏の人間とやらで?」
「昔ね。今は困った人を助ける仕事をしてる。」
「……私達に動くなと言うのならば常盤台中学が餌食になるのを待てと?」
「そうは言ってねぇよ、ガキ。」
黒子の方に手が置かれる。初春の手でも佐天の手でも美琴の手でもない。黒子はその手に警戒心をもち自身を咄嗟に瞬間移動させた。
「何者ですの?」
太股に装備した鉄芯を手に忍ばせいつでも迎撃出来るように体勢を整える。
「喧嘩売るなら力量を考えろよ。レベル4なんだ、馬鹿じゃないだろ。」
「っ!何ですって!」
「止めた方がいいよ。その人強いから。」
滝壺は突然現れた人物をじっと見た。今の彼女は能力が使えない為何も出来ないが。
「久しぶりだな二人とも。他の奴らは……どうでもいいか。それより大事な話だ。」
「何の用なの、第二位。」
「その名前で呼ぶなよ。元だしな。」
「第二位………?」
「そうそう風紀委員。俺は元第二位垣根帝督だ。お前らが足掻いても足元にすら及ばない人間だよ。」
「こんな奴がお姉様より……。」
「ちょっと、なんであんたがいるのよ。」
これだけ騒げば起きるだろう。美琴は寝起きでイライラしているのか紫電が散っている。
「睡眠中悪いな。緊急だから来た。」
「どういうこと?」
「常盤台闇討ち事件について。知りたいだろ?」
「あんた……関わってんの!?」
「俺は違うぜ。まぁ知り合いにな、いたんだよ。」
垣根は余った椅子に座るとお茶を要求してきた。近くにいた佐天がお茶を煎れている間、緊張感が流れた。