「貴女が……滝壺理后さん?」

「うん、はじめまして。」

「で、そちらの方は?」

「あぁー、滝壺の付き添いみたいなもんだ。俺は浜面仕上、残念ながら無能力者だよ。」

「私は風紀委員の白井黒子と申しますの。では早速いいかしら?」


滝壺と浜面が最初に連れられて来たのは路地裏だった。

「ここが……。」

「ではお願いしますわ。」

滝壺は路地裏をじっと見つめる。しばらくして空を見て今度は地面を見た。

「失礼ですけれど、彼女どんな能力でして?」

「あ?えっと、滝壺さ、今能力使えないんだ。」

「え?」

「昔能力使用で死ぬまで追い込まれた時あってな。今は体に負荷かけない様に使ってない。」

「ですが……。」

「能力が使えなくても滝壺は滝壺だ。それにアイツすごい優秀だからさ。」

「無理に協力なんて言って、申し訳ないですわ。」

「滝壺の意思だ。アイツが決めたことに一々言わないよ。」

「はまづら、終わった。」

滝壺はこちらに駆けてきて浜面の服の裾を引っ張った。まるで何かを求めているように。

「お疲れ、大丈夫か?」

「問題ないよ。それより……。」

滝壺は頭を浜面に向ける。浜面は少し考えてから滝壺の頭を撫でた。撫でられたことが嬉しいのか、滝壺はいつもより顔が赤く嬉しそうだ。

「おやまぁ、お熱いことでして。」

「あっ、これは、その……、ご褒美?」

「はまづらのなでなで、好き。」

「イチャイチャなら余所でやって下さいな。こちらは仕事中でお姉様の補充が出来ないのに……。」

「そうだ、報告しなきゃ。ここでいい?移動する?」

「一応機密ですから、支部まで来て下さる?」

「うん、行く。はまづら、行こ?」

「あぁ。」

黒子に続いて二人は歩きだした。その後ろを誰かが尾行していたことに気づかずに。


支部には待機の初春と美琴がいた。滝壺と浜面は二人に会ったことがないので自然と挨拶から始まることになる。簡単な挨拶を済ませて報告を聞くために、五人は座った。

「ではお願いしますわ。」

「うん。」

この報告で新しいことが分かれば犯人への道が近づく。そうすれば風紀委員も警備員も動き、犯人は近いうちに淘汰されるだろう。常盤台生徒の安全が保証されることになる。

「隠れるタイプ。」

「え?」

「攻撃するタイプじゃなくて、隠れるタイプの能力。援護っていうのかな。前線に出てぶっ放すのじゃない。」

「なるほど……。能力で身を隠しているのでは?初春!」

「もう調べてますよ。しばらく待って下さい。」

「間違いないのね、それ。」

「うん。ただAIMを人為的に操れたら分からない。感知タイプはAIMが頼りだから。」

「能力は使えないんでは?」

「なんとなくの勘。長い間能力使ってきたから感覚的に、ね。」

「あとはバンクから洗いだせれば…。お姉様、事態は明るくなってきましたわ。お休みになられては?」

「眠い、寝かせて。」

美琴は疲れが滲み出たのか、ソファでごろりとなる。しばらくして寝息が聞こえてきた辺り、余程疲れていたのだろう。黒子は美琴に毛布をかけてから、二人の為にお茶を煎れた。

「し、白井さん!!」

「どうかしまして?」

「バンクへアクセス拒否されました。」

「はぁ!?アクセス拒否なんて聞いたことありませんわよ。」

「でも回線が全部切られていて…。」

「何ですの、全く。意図的にしか見えませんわ。初春、拒否を解除出来ませんの?」

「今やってます。………バンクのウォール壊そうかな。」

初春はパソコンと睨めっこしている。指が動く速さが尋常ではない。

「隠れるタイプとせっかく分かったのに……。とんだ足止めですわ。」

「まぁさ、時間はまだあんだろ。あの花っ子すごそうだし。」

「隠れるタイプ…、知り合いにいたかしら?」

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