「闇討ち?」
「はい、正確に言えば能力者狩りが始まっているみたいです。」
「警備員は何も言っていませんわよ。」
「それが証拠がないんです、犯人を特定出来る。」
「……能力の逆算は出来ませんの?」
「痕跡が残っていないんですよ、全く。」
風紀委員である二人の話を聞きながら、美琴は複雑な気持ちでいた。本来美琴には此処に居てのんびり出来るような時間はない。しかし今はその仕事を放っておかなければならない程の事件が起こっていた。
数日前――とある常盤台生徒が何者かに襲われた。彼女は文化祭の準備の為の買い出し中に背後から殴られた…らしい。らしいというのは彼女自身の記憶があやふやであるからだ。
現在彼女は病院で療養中、そして常盤台全生徒に一人での外出の禁止が指示された。そこで終わるかと思われた事件は終わらず、あれから三人が襲われた。
生徒達には既に伝わっており当面の外出の自粛が言い付けられている。下手をすると文化祭が中止になる勢いであった。
「犯人を特定出来るものがあれば使えるんですけれど。初春、バンクから探知系統の能力者を洗い出せます?」
「調査協力をお願いするんですか?」
「風紀委員の中にいればいいんですけどね。」
「風紀委員内の方には調査してもらいましたがレベル的な問題が……。」
初春は画面上に幾つもウィンドウを出す。そこには検証結果が多く出ていた。
「……いつのまに?」
「私もいつまでも白井さんに負けてられませんから。」
調査に協力してくれた能力者一覧のレベルは2〜3、少々火力が足りない。正直レベル4がいれば事件は大きく進むだろう。
「とりあえず知り合いに探知系統がいないか確認してみますわ。」
「私も探す。」
二人が振り返ると美琴の姿が。
「常盤台生徒を狙った事件なら私も協力する。私は探知じゃなくて攻撃だから何も分からないけど、人を探すくらいなら出来るわ。」
「けど仕事が……。」
「生徒の安全を守るのも私の仕事よ。」
「分かりましたわ。」
美琴は早速携帯を取り出して電話帳を開く。名前を見ていき能力と照らし合わせていく。美琴は電話帳に入っている人間くらいの能力は覚えているのだ。
最後までいくが探知系統はいなかった。後は知人の知人を探すしかない。その上レベル4以上が好ましいときた。
ふと電話帳の一番上にある名前を見た。彼なら何か分かるかもしれない、そう思った美琴は通話ボタンを押した。一瞬躊躇ったが大事な生徒の為である。
「もしもし?珍しいな。」
「ちょっとね。アンタに協力して欲しいんだけど。」
「俺に協力を求めるなンざ、そこまで危ないのか?」
「実は……。」
「なるほどな、そォいうことかよ。」
「で、アンタの知人にいないかしら?」
「……いることはいる。ただアイツが許すかどォか…。」
「許す?」
「一応言ってはみるが半分駄目だと思っててくれ。」
「分かったわ。……ありがとう。」
「ンな言葉言われる資格なンざねェよ。じゃあな。」
通話が切られて黒子達の元へ行く。
「一応見つかった。ただ協力してくれるかは分からないって。」
「非常事態なのですから能力の出し惜しみなどしないで欲しいですわ。」
「まぁまぁ、見つかっただけラッキーですよ。とりあえずその人と会うだけ会いましょう。」
「そうですわね。」
「で、どォだ?」
「……俺が言う答えは分かってんだろ。」
「あァ。お前なら断固反対ってとこか。だがその女の意見じゃねェだろ。」
「はまづら……。」
「滝壺の能力はもう使えない。無理したら体に負荷がかかるって分かってて、どうして言ったんだよ。協力なんてしないに決まってんだろ。」
「決まっちゃいねェよ。それにその女は能力が全てじゃねェだろ。」
「?」
「能力使用で長年培ってきた勘ってヤツがある筈だ。感知タイプの勘は馬鹿にならねェ程当たるンだよ。お前が思う程その女は無力じゃない。」
「……はまづら、私は大丈夫。はまづらに助けてもらった体は何か人の為に生きることを望んでるんだよ。」
「滝壺……。」
「無理しない、無茶しない。約束する、ね?」
「………分かったよ。滝壺が言うなら。」
「じゃあアイツにはそう伝えておく。」
とあるファミレスでの会話だった。