※この話は杜若わかさんの「あっくんとカノジョ」のパロディ作品になっています。素敵すぎる原作者様の話を花宮真と黒子テツナで書いておりますのでご了承ください。黒子がin霧崎第一で年齢差は原作通り、黒子と花宮は中学時代から付き合っております。






どうしてこの二人は付き合っているのだろうと、瀬戸はぼーっと眺めながら思う。瀬戸の視線の先には、高圧的な態度で彼女に対して酷い扱いをしている花宮の姿と、そんな仕打ちを受けながらニコニコとしている黒子の姿があった。ニコニコといっても微笑み程度なのだが付き合いが長いとあれでニコニコしていると判断してしまう。それほどまでに黒子は普段無表情で過ごしているのである。鉄仮面というあだ名をつけられていた黒子も花宮の前では女の子なのか、基本的に笑っていることが多い。けれどそれに対する花宮の態度はもう嫌っているんじゃないかと思わせるものなのである。もちろん花宮は黒子のことを嫌ってなどいない。嫌っていたら2年間も付き合いが続いているわけがない。では何故花宮は黒子に対して不遜な態度を取るのか、――今時の言葉で言ってしまえばツンデレや恥ずかしがり屋という言葉が合う。好きな黒子の前で素直になれずつい高圧的な態度で過ごしてしまうのである。そして黒子はそれを理解している、だから酷い扱いをされても決してめげない。

「ホント黒子すごいわー。俺だったらあんな彼氏別れてやるね」

「真さんは照れ屋なだけですから。買い物とか付き合ってくれるんですよ」

荷物も持ってくれますと黒子はふふっと笑う。学内で黒子の評判は高く想いを寄せている男子は多い。けれど花宮というガードと黒子が花宮に一途なため踏み込むことができないでいる。お互いが幸せなので特に言うことはないのだが、それでも時々どうしてかなと瀬戸は思う。花宮は確かに顔はいいし運動神経もよく頭もいい、男としては優良物件だ。でもそれに反比例して口は悪いし素行も良いとはいえない。不良ではなく優秀な問題児なのである。

花宮がいないとき、瀬戸は黒子にどうして付き合ったのか聞いたことがある。その時はまだ花宮とも黒子ともそんなに仲良くはなかった。ただ異色な組み合わせだったので興味本位で聞いてみたのだ。

「真さんを好きな理由ですか……。あの人結構面倒くさいですけど、でも優しくて良い人なんです。口とか態度とか悪かったりしますけど、あれツンデレのツンなので」

ツンデレなんてかわいいレベルではないのだが、満足そうな黒子を見て瀬戸は何も言えなかった。ちなみにこの会話を目撃した花宮によって瀬戸は体育館裏に呼び出され恐喝を受ける羽目になったりする。そんな嫉妬に瀬戸もなんだかおかしくなってしまい、そこから花宮と仲良くなったともいえたりする。




「で、花宮。今度はどうしたわけ」

「……たんマジかわいい」

「は?」

「ツナたんマジかわいい。天使ってなんであんなに輝いてんだよ、くそっ、かわいすぎて直視できねぇ」

机に臥してばんばんと叩いている姿があの花宮だと誰が思えるか。最初こそ戸惑いしかなかったが除々に慣れてしまい、今では呆れて遠くを見る余裕さえ出てきてしまった。ばんばん叩いてうるさいので「うるさい」といえば射殺すような目でこちらを見てくる花宮。だけれどもそれは一瞬でまた机と仲良くお友達状態だ。

「黒子ちゃんがかわいいのは何回も聞いたって」

「ツナたんのかわいさはそんな刹那的なもんじゃねぇ。あれは所謂聖なる光の如く世界を照らしてんだよ、んなことも分かんねぇのかお前は」

思わず殴りたくなる衝動に駆られるがそこで平静を装えるのが古橋である。死んだ魚の目と称される彼の目は花宮への同情と黒子への憐れみで満ちている。それを知ってか知らずかは分からないが花宮は黒子の素晴らしさ神々しさを延々と語り続けた。これはツンデレのデレではない、病みだ。愛しい黒子を守るためならストーカーだって平気でするし、花宮のパソコンやスマホには隠し撮りであろう写真が大量に保存されている。おはようからおやすみまで完璧にが花宮のモットーであり、犯罪じゃないかと古橋は思っていた。けれどそれを花宮に言ったところで効果など無いので最早諦めている。

ちなみに花宮は黒子の前では黒子と呼んでいるが、黒子がいないところではツナたんと呼んでいる。本人にばれたらドン引きされるかもしれないがそこは花宮、そんなミスを犯すような人間ではない。表と裏をきちんと使い分けているからこそ、黒子から縁を切られずに済んでいるのかもしれない(だが黒子も花宮にベタ惚れな部分があるため何とも言えないが)

「そういや黒子ちゃんパンケーキの店行きたいって言ってたけど行くの?」

「俺がツナたんの希望を叶えねぇわけねぇだろ、バァカ」

「ねぇ、俺そろそろ本気で表情筋動かしていい?」

素直に一緒に行こうとは言えなかったが“花宮なりの言い方で”黒子とのパンケーキ巡りは取りつけてある。支払いは当然花宮持ちなのだが、どうせ素直に会計を申し出ることはできない。「黒子がノロマだから払っておいてやった」だの言って渋々(を演じて)払うのである。黒子は最初こそお財布を出して割り勘を要求したが花宮の機嫌が本当に悪くなったので、二回目以降は値段に応じて控えるようにしている。

「パンケーキ食べてるツナたん絶対かわいい。かわいいっていう言葉じゃ役不足なくらいかわいい、絶対」

「花宮のキャラ崩壊が恐ろしすぎて絶句だよ。ホントにあの悪童なの?」

「俺の悪童なんてツナたんの前じゃ消え失せんだよ。お前にもツナたんのかわいさが分かればいいんだがお前はツナたんの素晴らしさを知ることに選ばれてないからな」

「瀬戸助けて!俺もう限界!」

半泣きの状態になりながら事情を知る瀬戸のもとへ縋りに行く古橋。一方花宮は古橋の態度など気にもせずにパンケーキのことしか考えていなかった。黒子が行きたいと言った店の情報収集に周辺の治安なども調べ安全な時間帯をきちんと把握する。黒子のかわいさに惹かれた馬鹿共がいても花宮一人でどうどでもできるが、黒子を怯えさせるようなことになったら大変である。黒子が友達とまた行きたいと言う可能性もあるので、その辺も考慮して調べるべきかもしれない。友達同士とでも花宮は結局ついていくのだが、黒子に知られるわけにはいかないのだからひっそりとになる。

「パンケーキ食べてるツナたんマジ天使」

今日も無冠の五将の悪童である花宮は愛しい彼女にすべてを捧げるべく頑張っている。





★小話★

「そういえばもうすぐバレンタインですね」

唐突といえば唐突だがテレビやコンビニやらは商戦のためにかなりフライングで宣伝をばんばんやっているため、耳には馴染みの言葉だ。女の子が好きな男の子にチョコをあげる日の筈なのに、今では義理チョコ友チョコが主流になってきている。男としては自身の価値が下がっているように感じる記念日だったりする。黒子と花宮はお付き合いをしている関係なので当然渡し合っているのだが、花宮の性格がなかなかに癖を発揮していた。

「今年も頑張って作りますね」

「いらねー、お前のなんか食ったら腹壊すだろ。マジな意味で飯テロになる」

「…そうですか」

と花宮から冷たく振られてしまった訳だが、これが花宮の本心でないと黒子は分かっている。じゃなきゃ毎年きちんと食べてくれる理由が思いつかない。おまけに律義に3倍返しくらいで美味しいチョコかクッキーをお返しでくれる。高いではなくて美味しいというのが嬉しいところである。高くても黒子の好きな味ではない可能性があるからか、花宮は黒子が美味しいと思うようなものを買ってくれるのである。

(真さんの要らないは要るっていう意味なんですよね)







「うわっ」

廊下で急に抱きしめられた、説明終了。それ以外にこの状況を的確に説明できる言葉はない。周りにいる生徒たちが何やらキャーキャー言っているが、黒子の耳にはそんな音入ってこなかった。花宮が何故か自分を抱きしめている、それも公衆の面前で。これが熱々のラブラブカップルなら何も問題はないのだが、相手は花宮真である。普段から悪態しかつかない常時ツンデレの花宮が何故黒子を抱きしめるなんて行動をしているのか。

(しかし久しぶりのデレ期ですねー、一か月振りくらい?)

花宮は時々ではあるがこうしてデレることがある。理由は知らないが周りの意見を聞くと衝動的なのだとか。ただ花宮の本質はツンだ、だから当然こんな幸せの時間も長くは続かない。1分くらい経ち花宮は自身の体から黒子の体をばっと引き剥がした。普段不機嫌そうな表情か悪い表情しかない花宮の顔がどんどん赤面していく。もう赤くならないんじゃないかというところまできて、花宮は荷物を廊下に放り出して廊下を駆けて行った。

「このデレだと何日ガン無視かなぁ……」

嬉しいことと悲しいことが一度に来たような気分だった。






「……永久保存ってどうするんだっけな」

花宮の目の前には黒子から渡されたチョコが三つある、もちろん全部手作りだ。二つは美味しく大切に頂くとして、あとひとつを永久保存させて手元に残したい。人間の体はホルマリン漬けにするとよく言われているが、チョコの永久保存はどうやるのか。さすがに博識の花宮でも調べなければ分からないことはある。けれど永久保存を実行に移せない訳が花宮にはあった。

「ツナたんのチョコが二つしか食べられないなんて…死にたい」

永久保存したチョコは飲食用に保存するわけではない、観賞用に保存したいのだ。そうすると三つのうち二つしか食べられないことになる。せっかく黒子から貰ったのに三分の二しか食べることができないのは痛手だ。一つ一つ黒子が手間暇込めたものであり、一つ一つに愛が籠っているチョコ達。永久保存してしまえば込められた黒子の愛情を受け取ることができなくなってしまう。

「……俺は、俺は!!」

永久に残したい、でも黒子からの愛が欲しい。苦渋の決断を迫られた花宮は結局最後の一つに手を伸ばし口に含んだ。






「真さん知ってます?僕たちがこの前行った本屋さんカップルで行くと別れるジンクスがあるんですって」

二人で下校している際に黒子が発した言葉に花宮は手に持っていたコーヒーを落としそうになった。そんなジンクスがあるなんて知らなかったし、それを言ってきた黒子がどういう気持ちでいるのかが分からないからだ。もしかしてこれは遠まわしに黒子からの離縁状なのかもしれない。もしくは別れたときに「やっぱりあの話は事実だった」と伏線にしたり話題の種にするのかもしれない。黒子と別れるなんて花宮にとっては受け入れ難い絶対に起きてほしくないことである。

「って友達は不安がっていたので、僕たちでそんなの嘘だって証明しちゃいましょうね」

ふわりと笑って黒子は花宮のブレザーの袖をくいっと少し引っ張った。







「花宮ってなんでいつも一夜漬けで暗記科目やんの?」

考査のための勉強をしている時にふと思った疑問を瀬戸は口に出した。花宮の頭が優秀なのは誰もが知っている事実だが、それは考査の点がいいだけであって普段から真面目に勉強をするタイプではない。数学などは授業中だけで十分らしく課題以外の勉強をしたことがないくらいだ。しかし社会などの暗記科目に関しては、花宮は一夜漬けでほぼ満点を記録している。花宮のことだから毎日きちんと覚えておけば一夜漬けなんて愚行に出る必要はない筈なのだが。

「こんなくだらねぇことに記憶使ってたまるか。俺は毎日ツナたんのこと考えたり記憶するので十分なんだよ」

いつ何処で何を話したか何をしたか、黒子に関する情報なら全て花宮の頭の中にインプットされている。冗談ではなく本気だ。一字一句正確に記憶しているものだから、勉強なんてものに割いている余裕はないのである。

「うわー残念すぎてマジ引く」

「うるせぇ、あぁーツナたんマジ天使」








「最近すごく寒くなってきましたね。僕冷え性なので困っちゃいます」

「………」

「……手とか繋いだら温かくな――」

「何ふざけたこと言ってんだお前。寒いなら手袋でも買ってどうにかしてろ」

手を温めることを口実に手を繋ぐことができなくなった瞬間であった。






「花宮が音楽聴いてるなんて珍しい」

がたりと花宮の席の前に腰を下ろした原。音楽に集中していて花宮は原がいることに気付いていないらしい。もしこれで花宮がアイドルの曲なんて聴いていたらとんだ笑いのネタである。そっと手を花宮の耳元に伸ばし、一瞬でイヤホンを耳から抜いた後自身の耳につけたみた。

「……?この声って――」

「おい原、てめぇ何してやがる」

視線に攻撃力があったなら原はきっと瞬殺されていただろう。それほどまでに恐ろしい顔で花宮は原の襟を軽く掴んだ。

「ちょ、暴力反対だって!ってかこの声黒子ちゃんじゃん、しかも鼻歌」

「ツナたんの鼻歌ベストなんだから当たり前だろ馬鹿」

「鼻歌ベスト?お前そんなの作ってんの?」

「あぁ、2年かかったがな」

2年間花宮は黒子の鼻歌を盗聴して録音していたらしい。もはや犯罪者の域である。知り合いに犯罪者がいるという事実を認めたくはないのだが、これが一応友人の花宮真である。恋人にベタ惚れでストーカー紛いの優良児花宮真である。

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