この話を書いている時点では本誌内容になるので、コミックス派の方々にとってはネタバレになります。
また黛先輩に対する描写が無しにも等しいので、こちらで捏造を多々行っています。
口調など正確に把握できていないのでこちらで勝手に作っています。
本誌派の方々もその点はご了承下さいませ。
この話はまだ絡みも何もないこの現状で黛黒とか絶対美味しいだろこの野郎と滾った蒼氷による妄想爆裂小説になります。
それを踏まえてお進みくださいませ。











赤司が黛をレギュラーの一人として迎えたのは、一番黛の可能性が大きかったからに他ならない。かつての中学時代に見つけ出した異質な才能、それに一番近いものを再現できそうなのが黛だった。もちろんあの技術は彼本来の影の薄さとセンスを生かしたもので、それは誰にも真似はできない。けれど影の薄さはともかく技術を行使するセンスでいえば黛は彼に近いものをもっている。彼のようにそのセンスを多方面に進出させることは出来なくても、そのセンスを黛のもつ可能性最大限まで引き出すことができれば十分に通用した。

「誠凛は涼太の存在があるから火神の技は徹底的に研究している。だけどテツヤの技は涼太にでも真似出来ないとあって対策なんてしていない。まさか相手チームがテツヤと同じ技術を使って苦しめてくるなんて誠凛は思いもしないだろうね」

赤司が黒子の話をするとき大抵笑みを浮かべている。懐かしい故なのか期待をかけていた故なのか、それは黛には分からない。だけどその表情が黛は大嫌いだった。今の仲間は洛山なのに何故中学を振り返るのか。此処には無冠と呼ばれる人材が三人もいるのに何故キセキしか見ないのか。子供じみた嫉妬かもしれないが、黛のなかでは常に火が渦巻いている。

黛が赤司に対して抱いている感情は敬愛、その一言に尽きる。負けを知らない完璧と称される赤司征十郎に黛は敬意をもっていた。五人目として選ばれたから敬意を抱いたのか、元から敬意を抱いていたのか、それは黛にとってはどうでもいいことだ。たとえ代わりだとしても、赤司が自分を選んでくれたということに黛は歓喜していた。

赤司が黛に刷り込んだのはミスディレクションの技術だけではなかった。赤司は黛に本来の持ち主である黒子テツヤの情報さえも刷り込んでいった。もちろんそんなものは技術を行使する際には必要のないものだ。それでも赤司は技術ではなく黒子そのものを再現させるかのように、黛に“黒子”を徹底的に教え込んだ。同族嫌悪のような気持ちを抱かせるという目的もあったのかもしれない。しかし黛はそんな無理を押し付ける赤司に反発することなく全てを吸収していき、やがて黒子の特徴を受け継ぐ洛山レギュラー五人目となった。







「……、君は………」

都内某所にあるマジバにて、黒子は本を読みながらバニラシェイクを啜っていた。WCは無事に幕を下ろし誠凛バスケットボール部は少し長い休みを貰ったのだ。それぞれやりたいことをするなかで、黒子は溜まった本とバニラシェイクへの欲求を満たすためにマジバで読書タイムを確保していた。いつもは騒がしい店内も時間帯の問題なのかあまり五月蝿くはない。席もまばらに埋まっていて読書をするのには何ら問題はない環境である。

二階席の窓際一番端は黒子が最も好む場所であった。それはマジバだけではなく全ての店でいえることだ。人の動きがよく見えて尚且つ両側が人で埋まらない場所――電車などでも席は両側から埋まっていくのを想像してもらえば分かるだろう――は黒子にとって最も落ち着く席の位置であった。そこで本を静かに読んでいると不意に自分に他者の影が落ちる。話しかけられたことも助長して黒子が本から顔を上げると、そこにはついこの前激戦を繰り広げた相手が黒子と同じメニューを持って立っていた。

「あなたは……黛さんでしたよね」

「覚えていたんだ」

「はい。……僕と同じ技を使う方だったので」

勘の鋭い黒子のことだ、赤司が言わなくても黛の技術のベースが自分であることぐらいは容易に想像がつく。奇策として黒子の技術を返し技として使ってくるなど黒子でさえ予想がつかなかった。まさに奇策の役割を果たしたといえるだろう。その技術を見せられた時、黒子の脳内はとにかく混乱していた。黛が自分の技術を使ってきたからというのも理由だが、一番の理由は何故黒子の技術を赤司が黛に教えたかだ。ミスディレクションは確かに一種の切り札だ、それは幻の六人目という称号が証明している。しかし赤司のなかで高校の試合で第三者にわざわざ教え込んで実用化させる程の価値があったとは思えなかったのだ。黛は黒子と違って普通のプレイも洛山レベルでこなすことができる。その実力にミスディレクションの技術を加えることはデメリットにもなりかねない。そんな判断を赤司がすると黒子は思えなかった。

試合は火神の奮闘や他メンバーの尽力があり僅差だったが誠凛が勝利を収めた。初めて負けを知った赤司はその場で倒れてしまい場が騒然としたのは強く記憶に残っている。その姿を見てしまった黛は顔面蒼白といった様子で、その姿も黒子は強く覚えていた。

「………バニラシェイク本当に好きなんだ」

「えぇ、赤司くんから聞いたんですか」

「いや、『僕も好きだから』」

マジバのカップは紙なので外から中身を見ることはできない。黒子の隣に座った黛は蓋を外して中身が黒子に見えるように少し傾けた。当然のことだが黒子の情報が黛に受け継がれていることを黒子は知らない。そんなことを黒子が知れば当然赤司に対して激昂したであろう。ただ純粋に黒子は同じ趣向を持った仲間なのだと嬉しくなってしまい、いつもより少し饒舌になる。バニラシェイクのこと、普段何をして過ごしているか、趣味は何なのか、どんなものが好きなのか。試合で会った以外初対面だというのに口がどんどん動いていく。まるで――前から知っていたかのように。

先程も述べたが黛は黒子の情報を様々インプットされている。だからバニラシェイクが好きで店に入って選んでしまう席は二階席窓際一番端、そして好きな作家ももちろん一緒だ。対して黒子は自身と同じ趣味趣向をもった人と出会うのは初めてであった。つまり何が言いたいかというと――素直に嬉しいのだ。好きなことを同じ観点で見れることが、黒子はとても嬉しかった。そして黒子の情報を受けてそれらを好きになった黛にも同じことが言えた。黒子の好みすらインプットされた黛は当然普段の生活から黒子のような過ごし方をする。今まで黒子の周りに同じような人がいなかったように、黛の周りにも同じ趣味をもつ人はいなかったのだ。赤司は黛を捻じ曲げただけでそれ以外何もしていなかった。




「今日はありがとうございました。明日帰られるんですよね」

「うん、帰る前に君と話せてよかった」

赤司が執念を抱く存在黒子テツヤ、最初はその存在が憎かった。終わった存在なのにどうして赤司の中で生き続けるのか、どうして赤司を揺さぶるのか。録画された試合映像を見ていつもオリジナルよりも優秀でいたいと強く願い続け練習してきた。けれど赤司によって作られた黛がどんどん黒子に近づくたびに、二人は本質的にも近づいてしまったのだ。結果こうして分かり合う未来が来てしまった、恐らく赤司にとってこれは想定外だろう。もちろん黛にとっても黒子と仲良くなるなんて試合をするまで思いもしなかったことだ。けれど同じコートで同じ競技で競い合って、黛は黒子を本当の意味で知ってしまった。それが黛を変える大きな一つの歯車になったのだ。

「じゃあまた試合で」

「はい、またあなたと闘いたいです」

京都と東京、物理的には離れてしまっているが二人の距離はぐっと縮まった。この出会いがどんな変化を起こすかは分からない。それでも、黛は、初めて自身の技術を好きになった。









同族嫌悪な黛黒も可愛いよね↓↓


「その技……僕の………」

パスの軌道を影の薄さと視線誘導を使ってトリッキーに急転換させる。黒子がいつも使っているミスディレクションの初期活用だ。

「オリジナルがどちらかなんて関係ない。強い方が本物だ」





とか試合中バチバチやってくれないかな。

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