「さて、今年はどうしたものかな」

赤司の前に広がるは無数のパンフレットやカタログ。そこらのデパートで扱っているようなものはなく、名前が世界規模で有名なものなどしかない。それらの雑誌を部活のメニューを組み立てると同時に赤司はパラパラと眺めていた。そこに入ってきたのは赤司と対等である数少ない部員の実淵だ。実淵は今日の部活で聞きたいことがあって赤司の元を訪れたのだが、机に広がる雑誌の山に目が行かずにはいられない。幸い余程のことを言わなければ赤司の逆鱗に触れることはないので、聞いても恐らく大丈夫だろう。

「それ、何に使うの?」

「あぁ、テツナの誕生日が近くてね。プレゼント選びに苦心しているところだ」

「テツナちゃんの?そういえば最近の征ちゃん少し浮きだってたわね」

「そうか、態度に出している自覚はなかったのだが」

「去年は何をあげたの?」

「去年は確か外車だな」

「へ?」

実淵の聞き間違いでなければ赤司は外車と言った。まだ年端もいかない少女に外車をあげるなど、一庶民である実淵には考えられないことだ。けれどドラマなどで令嬢に車の鍵をあげるシーンなどはよくある。高級な世界の中では普通なのだと、実淵の中で話に纏まりをつけた。

「だがテツナはあまり明るい表情ではなくてね。今年こそは良いものをと色々見ているが、中々決まらない。やはり物ではなく資産などが良いんだろうか」

「ちょ、征ちゃん!普通に考えて小さい女の子は外車なんて貰っても嬉しくないわよ」

「嬉しくない?何故だ、結構値段はするぞ」

「小さい子に外車の価値なんて分からないわ。それに車なんて運転出来ないのに貰ったところで親御さん達に使われるだけ。結局テツナちゃんのところには何も残らないでしょう」

「……確かに正論だな。じゃあ僕は今までテツナにとって残らないものをあげていたのか」

よくよく思い返せば、兄である辰哉は髪飾りなどをあげていた。もちろん素材一つ一つが超高級品なので髪飾りといえど云百万とするのだが、それを貰ったテツナは顔を綻ばせて喜んでいた。次兄も美しい扇子をテツナにあげていて、公式の場で度々使っていたのを赤司も目にしたことがある。きっと高くてもテツナが使えるものでないと意味がないと分かっていたからだろう。赤司があげた物達は今誰が管理しているのかも分かったものではない。もしかしたら親族の誰かが勝手に使っている可能性もある。だからテツナはどこか落ち込んだ表情で受け取っていたのだと、赤司はようやく理解した。

「玲央、ありがとう。おかげで今年は素晴らしい誕生会になりそうだ」

「あら、そう?なら良かったわ」

結構な物言いをしてしまったのだが、赤司の機嫌が損なわれなかったので問題ないみたいだ。もしかしたら礼ということで何かラッキーなことがあるかもしれないと、実淵は少しだけ心を躍らせた。一方赤司は机にあった雑誌などを全てゴミ箱に捨て、そのままスマートホンで何かを探し始める。覗き込みたい気分だったが、そんなことをしたら確実に制裁行きなので、そんなことはしない。ただ赤司の表情は爛々と輝いていた。

「玲央、今日の部活はお前に任せる。僕には用事ができた」

「はいはい分かったわ、いってらっしゃい主将様」

赤司が何処に行き何を買うのかは分からないが、少なくともテツナの表情は明るくなるのだろうなと実淵は部員達に主将不在のメールを送った。その日の部活は赤司不在ということで部員の高が外れ、後日赤司からの説教を受ける羽目になるのだが、それはまだ誰も知らない事実である。




赤黒で誕生日SSです。本当は1月31日に更新するべきなんですが、受験中だったので3月12日に投下です。私の誕生日に黒ちゃんをお祝いできて私が嬉しいという、ね。赤司様が何を買ったのかは皆さんの想像にお任せしますが、キセキのみんなが急遽駆り出された事実があるということだけお知らせします(笑)

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