常盤台中学といえば名門お嬢様学校として学園都市内で広く知られている。学力も高いし能力者各々のレベルも高い、まさに名前に恥じない実績をもっている。そんな常盤台中学の中で最も高いレベルをもつのが学園都市レベル5の中の第三位の座につく御坂美琴である。彼女は努力でそこまではい上がった、能力者達の中で憧れの的だった。

「そンな第三位も勉強は苦手だなンて可愛い一面があンだなァ」

「う、うるさいわね!中学生なんだから仕方ないじゃない」

期末テスト一週間前、普段から勉強を疎かにしない美琴であったが、苦手な内容が複数積み重なった結果かなりの絶望状況に追い込まれていた。第三位という言葉だけ聞くと学園都市で三番目に頭が良いだなんて誤解をするかもしれないが、実際そんなことはない。美琴の使う超電磁砲は出力こそ最強クラスであるが、そこに至るまでの演算能力というのはそこまで必要無かったりするのだ。もしかしたら瞬間移動を使う黒子の方が演算能力だけでいうと上かもしれない。

「つゥか数学なンて大したモンじゃねェだろ。悩むなら英語とか国語にしろ」

「私国語は得意なのよ!もしかしたらアンタにも勝てるかも」

「……まァ確かに小説文はからっきしだからな」

天才といわれる一方通行は国語の心情把握がものすごく苦手だ。そういうのを必要としない環境で生きてきたことも要因かもしれないが、先天的に苦手という可能性も少なくはない。しかしそれ以外のものは大半かなり出来る。言語では英語も完璧だしロシア語もペラペラに話せる。海外に行っても一方通行さえいれば問題ないと言えるかもしれない。また能力を使うにあたって頭が完全に理系で構成されているので、理系の科目は最高位を常にキープしている。平たく言ってしまえばチート人間である。

さて、話を戻そう。とにかく美琴は一方通行に教えを請うべく家を訪れ、リビングで勉強を教えてもらうことになった。机に広がるはテスト範囲のプリントや教科書、参考書などなど。それらの至る場所に付箋が貼ってあり、美琴の真面目さを物語っている。一方通行はノートの一つを手に取りパラパラとめくってみせた。綺麗な文字で綺麗に書かれたそれは、いかにも優等生といった代物である。授業中きちんと聞いていたことがそこから伺え、一方通行は改めて美琴をじろじろ見た。

「ちょ、何よ」

「いや、思った以上に真面目って思っただけだ」

「私はアンタと違って問題児じゃないもの」

「その問題児に教えを請うのは何処の誰だか」

「う、うるさいわよ!」

勢い余ってビリビリと少し放電してしまう。電気系統に影響を及ぼす程ではないにしろ、近くにいた一方通行は当然余波を食らった。しかも一方通行は電極という高度の精密機器を扱っている身だ。もしかして何か起こしてしまったかもしれないと、美琴はオロオロと焦り、ゆっくり一方通行に声をかけた。

「あ、その…ごめんなさい。何か変なこととか起きてない?」

「不意打ち食らっただけだ、問題ねェよ。つゥかそんな脆いモンでもねェしな」

「そっか……」

途端に暗くなる場の空気。いつも明るい美琴が黙ってしまったばかりに起きた静寂が肌を突き刺す。その静寂を払拭するかのように、一方通行は教科書に手を伸ばし、付箋の箇所を指差した。当然美琴の視線もそれにつられるように動く。

「とっとと終わらせるぞ。時間ねェンだろ」

「う、うん!」

まずは苦手な数学からと、問題集に取り組んでいく美琴。いつもならすぐに怠けてしまうのだが、今日は一方通行がいるからか、すっきり集中することができていた。今まで分からなくて悩んで結局飛ばしてしまった問題も、美琴の手が止まり少しした後一方通行が解説を入れたりヒントを出してくれるため、どんどん解けていく。いつもの出来とは全く違う、驚くべきスピードで終わっていった問題集を見て感じて、美琴はなんだか無性に嬉しくなった。

「飲み込みは早いンだ、あとは集中力だろォな。そこさえ克服すりゃ問題ねェだろ」

「確かに私、飽きっぽいってのはあるのよね。直さなきゃとは思ってるんだけど」

今は傍に一方通行がいてくれるから問題はない。けれど一人に戻った時に今のようなモチベーションが保てるかどうかが心配である。美琴は自分自身で問題点を自覚しているため、自分に確証がもてなかった。もちろんそんな弱音を吐いている余裕などないのであるが、これからのことを考えると不安なところである。

勉強だけではない。美琴の中には理想に応えなければという一種の強迫観念的なものが眠っていた。第三位というだけで様々なまなざしで見られている。周囲からの期待に応えるべく無理をしているのも嘘ではない。そんな美琴にとって勉強とは、「第三位として出来て当然なもの」として認知されているものだと思っている。

「自信を持て。お前は今まで壁を乗り越えてきたンだろ。第三位なンて地位を貰ってンだ、十分に実力はある」

一方通行からの褒め言葉に美琴は唖然とした。一方通行は皮肉こそ言うものの、褒め言葉なんて口にしないと思っていたからだ。それに一方通行は第一位で美琴は第三位である。圧倒的な力の差を前に、一方通行がまさか美琴を評価するだなんて、正直信じられないことである。けれど一方通行が褒めてくれたということは紛れもない事実で、それが美琴を元気づける要因になったのは間違いない。

「なんかアンタにそう言われると意地でも頑張らなきゃって気持ちになるわね」

「そう思うならさっさと勉強しろ」

「さっきまでの優しさは何処にいったのやら」

大きなデレを見せてくれた分、暫くは見られなさそうだ。美琴は少し肩の力を抜いて、目の前の難関に立ち向かうべくペンを取った。

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