「ねぇ真お兄ちゃん。どうして真お兄ちゃんはバスケが好きなんです?」

「そうだな、ボールがネットをくぐる瞬間とか相手をドリブルで抜いた瞬間とかが楽しいからだ」

「……僕も」

「?」

「僕も真お兄ちゃんと一緒にバスケしたいです」



誠凛高校に受かって1ヶ月、バスケ部にも慣れてきて黒子は安定した生活を送っていた。今までいた帝光中の練習は正直地獄レベルだったのだが、やはり高校というだけあって、誠凛も死にそうになるようなメニューを毎日組んでいる。それでも文句が出ないのはリコの献身的な努力によるものだろう。高校生という身で監督役を担ってくれているわけだから、当然文句よりも感謝のほうが圧倒的に多いわけである。そして高校生になった黒子には、もうひとつどうしてもやりたいことがあった。幼いころ黒子とよく遊んでくれバスケというものを教えてくれた人、『真お兄ちゃん』を探すこと。『真お兄ちゃん』は黒子が中学へ進級する前に引っ越してしまい、それ以来会っていない。ただ都内にいることだけは確実で、恐らくバスケも続けているだろう。なにせ黒子にバスケに対することを情熱的に教えてくれた人だ。今もどこかで真摯に取り組んでいるに違いない。

「学校名も知らないんじゃどうしようもないですけど……」

基本的にどの高校にもバスケ部はあるので、それだけの情報で特定するのは難しい。先輩陣に聞いてみたが、バスケが大好きで真という人には心当たりがないようだ。唯一頼れる情報源だったので残念である。

「その『真』っていう人が黒子にバスケを教えてくれたのか?」

「はい、真お兄――真さんが僕にバスケの楽しさを教えてくれて。だから僕お礼だけでも言いたくて」

こうなったら公式試合で会えるのを待つしかない。『真お兄ちゃん』は眉毛が特徴的なので、見ればきっと分かるだろう。先輩達に容姿を聞かれた時、「眉毛が特徴的です」とは言えなかったが、本人の面子的に。

「身長は高めで綺麗な黒髪で頭は良くて、輝かしい目でボールを見る……ねぇ。ちょっと美化しすぎじゃない?」

「そうでしょうか?」

会っていないから記憶が確かではないかもしれないが、だいだい合っている気がする。頭は良かったし綺麗な黒髪だったし、身長も同世代の人より高かった。中学で178cmは高いほうだろう。―――黒子は花宮の身長がそれ以降全く伸びなかったのを知らなかった。

「分かったら知らせるけど期待はしないでね」

「いえ、ありがとうございます」

結局『真お兄ちゃん』は分からないまま、誠凛はWC予選を迎えることになる。





「絶対嘘です!真さんがあんなゲスなわけありません!」

「でも花宮は木吉の膝を壊した奴、それは変わらないわ」

「だって真さんは一生懸命プレイをする僕を見て『努力はきっと実るから』って励ましてくれたんです!なのに……」

「はい、これについて弁解は?」

「だからそのっ、テツヤに会わない間に色々あったっていうか……」

「色々ってなんですか!僕に分かるように説明して下さい!」

「花宮が慌ててるとか珍し〜。この子花宮のなんなわけ?」

「この人は僕のバスケにおける師匠みたいなものです。言ってましたよね、バスケは五人で繋いでく絆のスポーツだって」

「ちょ、やめ――」

「最高のチームで最高の絆を築くのが楽しみなんだって言ってくれたのに……」

「花宮が……チーム」

「花宮が……絆」

「似合わなすぎて気持ち悪っ!」

「テツヤそれ以上言うな!そいつは俺の黒歴史なんだよ!」

「止めません!真さんは少しグレてるだけなんです!だから初心を思い出せば……」

「なぁなぁ黒子クン、花宮の黒歴史もっと教えてよ。花宮からかうネタにできるしさ」

「何言ってんですか。僕は真さんを以前のようにするために、昔の話をしているんです。からかったり馬鹿にしてるんじゃないんです。それにバスケを馬鹿にしているあなた達のこと好きじゃないです。あっち行って下さい」

無表情のまま花宮の過去を語り出す黒子と、地面に頭をつけるようにうずくまる花宮。黒子の口を封じればいいのだが、黒子のイグナイトが火を噴くため容易ではない。霧崎第一のメンバーは明かされる花宮の過去が信じられなくて、笑いを堪えられなかった。誠凛メンバーも憎むべき花宮の醜態を見て呆気にとられている。

「本当に頼むから止めて下さい」

「花宮が敬語だと!?」

「じゃあ言って下さいよ、『バスケは友達』って」

「言えるか馬鹿!!」

花宮が黒子に殴りかかろうと襲いかかる。黒子は花宮の軌道を見極めると、瞬時に避けて鳩尾に綺麗な一手を加えた。

「殴りかかるなんて言語道断、教育的指導というやつです」

力関係はなんだかんだで黒子が上なのだと、無意識にみなが悟った。





+++

この後花宮は黒子ちゃんの前ではなるべく良い子でいようとするんじゃないかな(だって黒子ちゃんのイグナイト痛いもん)

口喧嘩とかだと花宮の圧勝だけど肉弾戦なら黒子ちゃんも負けないよ(ミスディレからのイグナイトは痛いよ)

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -